日本最大級〝水中鍾乳洞〟

日本最大級の〝水中鍾乳洞〟と発表された「ウンブキ」の内部(天城町商工水産観光課提供)


陸の中の海「ウンブキ」の入口。観光客も増えている=7日、天城町


「ウンブキ」洞内で確認された土器(天城町商工水産観光課提供)


水中鍾乳洞内を泳ぐ「ウンブキアナゴ」(天城町商工水産観光課提供)

陸の中の海「ウンブキ」
土器やウンブキアナゴも 水中探検家が発表

 【徳之島】天城町浅間(湾屋)の大地にぽっかりと開口した「陸の中の海『ウンブキ』」。西方約400㍍の海と地下で結ばれた未知の海底洞窟で、日本の水中探検家・水中カメラマンの広部俊明氏(54)が昨年9月から初の潜水調査を敢行。3月下旬の第4回調査の段階で直線距離にして約700㍍(水深40㍍)に達し、「日本最大級の〝水中鍾乳洞〟」と発表。ほか、洞内を泳ぐ希少種「ウンブキアナゴ」の姿や、海底からは〝縄文相当期〟類似の謎の土器も確認していた。

 「ウンブキ」(海の崖・谷の意)」ほか「浅間湾屋洞穴」の呼称も。開口部は潮汐で水面が上下し、岩間からは湧水(淡水)が流入して海水に混ざりアンキアライン(汽水域)を形成する。2011年に地元在住の自然写真家が日本初記録のイワアナゴ属を発見し、その後「ウンブキアナゴ」と命名された。

 だが洞窟内部の調査は、14年5月に佐世保工業高等専門学校が「水中洞窟探査ロボット」を20㍍余まで潜行させ初調査したのみ。その先は未知の海底洞窟のまま温存されてきた。

 広部氏(東京都出身、沖縄でダイビングショップ経営)は、日本最大の海底鍾乳洞とされてきた沖縄県「広部ガマ」(総延長約680㍍)の発見者であり、世界各国の海底鍾乳洞や遺跡状の地形も発見・調査してきた水中探検家。「ウンブキ」は数年前に情報をキャッチ。天城町当局の潜水調査の許可を得て昨年9月下旬に第1回調査に着手していた。

 特殊で高度な「テクニカルダイビング」技術を駆使。約7千年前の海面上昇で海中に没したとみられる石灰岩層の鍾乳洞からは、「地底湖とも呼べる大海底鍾乳洞」を発見。入口から約300㍍付近で「国内最大級を確信」。約70㍍、水深約30㍍の海底からは縄文時代以前に作られた可能性もあるという土器も発見。ほか、リュウグウモエビ属の一種とみられるエビや、泳ぐウンブキアナゴの姿(国内初の水中映像)も記録していた。

 第4回調査(3月20~22日)までに直線で約700㍍、総延長にして約1㌔まで確認(以降は中断)。自身が発見し日本最大とされてきた「広部ガマ」の総延長を超え、「日本最大の海底鍾乳洞になると思われる」と指摘。今後1年ほど天城町当局と同潜水チームが連携を図りながら潜水調査を継続して、20年ごろから一般公開できるよう準備を進める予定という。
 土器の映像に同町教育委員会の具志堅亮学芸員は「町内遺跡の縄文相当期の土器と似ているが、詳細の調査と地上部から別の流れ込み口がないかなどの調査も必要」。同地管理者の森田弘光町長は「ウンブキが大変貴重な資源であることが分かった。保全しながら観光資源としての有効活用も考えたい」と話した。

 潜水調査などには危険性を伴うため町当局許可が必要となっている。