新種のムヨウラン発見

新種のムヨウラン発見

新種と判明した「アマミムヨウラン」の花(上)と全体(下)(神戸大学提供)

奄美大島の山中
「森の豊かさや多様性示す」

神戸大学大学院理学研究科の生態・種分化分野を研究分野とする末次健司講師(31)は、奄美大島の山中で標本採集された光合成をやめて生育するムヨウランが共同研究で新種と判明し、和名「アマミムヨウラン」と名付けたことなどを学会誌に発表した。発見者で奄美市在住の植物研究家・森田秀一さん(61)は、思わぬ発見を喜び今後も貴重な奄美の自然保護を求めた。奄美では新種の発見が続くことから、自然の全容解明を期待する声もある。

森田さんは2018年5月、山中で静岡県などに分布するエンシュウムヨウランに似たラン科植物を発見。写真撮影後に、標本を採集して光合成をやめた植物(菌従属栄養植物)を研究する神戸大の末次さんに送って調査を依頼した。

末次さんによると、菌従属栄養植物は光合成をしないため花期と果実期のわずかな期間しか地上に姿を出さず、花も小さく見つけることは非常に困難だという。

サンプルを受け取った末次さんは、エンシュウムヨウランとの相違点もあり、共同研究者の熊本大学・海田新悟氏や澤進一郎氏と遺伝子を含む精査で新種と判断。研究成果を新種記載論文としてまとめ、国際的な植物分類学の学会誌『Phytotaxa』にて新種のムヨウラン「アマミムヨウラン(和名)、学名Lecanorchis moritae」と名付けた。

末次さんは新種発見を、奄美大島の森が肉眼では見えない菌糸のネットワークを含めた豊かな地下生態系の広がりを示すものと位置付け、「奄美大島の森の豊かさやそこにすむ菌類の多様性を示すもの」としている。

森田さんは新種の発見を喜び、「世界自然遺産に推薦されるぐらい豊かな自然というのは確かに言える。この自然環境をできるだけ良好に、残していかなければならない」と話した。

奄美のラン植物などに詳しい山下弘さんは、発見が困難で研究が進んでいなかったムヨウランでの新種発見を評価。「地元の研究者が発見に関わり良かった。研究者が増えて、今後の解明が進めばいい」「新種発見は、世界自然遺産登録を目指す奄美にとって良いニュースだ」などと語った。