~歌姫~城南海物語 10=NHK大河ドラマ「西郷どん」後編

笑顔の城南海だが関連曲を歌った際は、一気にスイッチが入った。下は、常に南海を優しく見守る「南海人」たち

証言者が紡ぐ奇跡の10年
「土スタ」出演で強いプロ意識を披露心地よいミナミカゼを陰で支える「南海人」(みなみんちゅ)
 2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」に歌い手として関わったことは、城南海にとって大きな自信となった。それと同時に、あらためて南海が、才能にあふれ魅力的な奄美の歌姫であることを強く印象付ける「事件」となったようだ。
 
 「富貴晴美さんの独特な旋律の世界に入り込めていることと、そこに山下洋輔さんのジャジーなピアノが加わる中に、島口の作詞に徹底した点はとても感慨深い。勇気がいることだ。過酷な島の歴史背景の中で、たくましく生きていかなければいけない愛加那や島の人々の心情をしっかり、陰と陽を明確化された世界観は素晴らしい。まさに南海の唄、南海にしか歌えない名曲だ」。そう語るのは、唄者・前山真吾である。大河ドラマに唄者として関わった前山だからこそ、絶賛する。作曲家・富貴晴美は、「どのようなオーダーをしても難なく、笑顔で期待以上のものを出してくださる、南海どんと一緒に作品を作ることはとても幸せなこと」と目を細め、「今回は、西郷どんというテーマがあった上で、南海どんに依頼しましたが、いつか彼女のために曲を書けたらな」との希望も抱くほど。聞く者をとりこにしていく彼女は、テレビのスタジオでもその魅力を咲かせている。
 
 NHKの「土曜スタジオパーク」に、愛加那役を演じた二階堂ふみと一緒に出演した際、ヒロインとしての片りんを示すシーンがあった。立ち会ったのは、当時プロデューサーだった藤原敬久。「ドラマで愛加那を演じる二階堂さんへの敬意を持った接し方に細かい心遣いのできる方だ」と感心する。一方で、当日、中国地方が豪雨災害に見舞われるアクシデントも発生した。「急きょ、当日の放送時間の変更のため、歌が短いバージョンになったにもかかわらず、二階堂さんやスタジオパークの観客席の前で堂々と歌われる姿に、そのステージ度胸を感じました。また、MCの質問に対して、簡潔に肝心なことや自身の気持ちを、うまく自身の言葉で答える城さんの姿勢には、強いプロ意識を見ましたね」。突然のシナリオにも対応する機転。数多くの出演者に関わってきたベテランプロデューサーを一瞬でファンとさせたようだ。心地よいミナミカゼを吹かせる南海を、陰で支える存在の一つにファンクラブ「南海人」がある。「1秒でも長くそばで見詰めていられますように」と、「土スタ」でも関係者が仰天するほど早く収録現場に現れている。南海の絶唱に、言葉を振るわせる二階堂ふみ。いつものように奇麗に静かに列を作った彼らは、時を超えて現れた「二人の愛加那」を優しいまなざしで見守っていた。
 (高田賢一)=敬称略・毎週末掲載