シマオオタニワタリ群生地で伐採

樹木が一部伐採されたシマオオタニワタリ群生地と滝の景観(27日、宇検村湯湾)

宇検村湯湾川「失われてしまう可能性ある」

 宇検村の湯湾川渓流で見られるシマオオタニワタリ群生地で、滝や群生地が見えるようにと一部で伐採が行われていたことが28日わかった。自然に詳しい専門家は、台風などで群生地の貴重な景観が失われる可能性があるなどと警鐘を鳴らしている。

 シマオオタニワタリは、環境省のレッドデータで絶滅危惧ⅠB類になっている着生植物。湯湾川渓流では、約700㍍の範囲に1千株以上が群生し国内唯一の群生地との評価も。自然写真家でNPO法人奄美自然環境研究会の常田守会長は、「沖縄県などから、記録撮影に多くの撮影班などが来る貴重な場所。切った樹木は数本かも知れないが、風が入りやすくなったわけで、わずかなことから群生地が失われてしまう可能性もある」と強調する。

 同村のガイド協会関係者が、4月半ばに滝の全景や群生地の様子が分かるようにと数本の樹木を切り倒して幹などを道路から降りる場所の階段として利用。奄美新聞の取材に対し関係者は「多くの人に見やすいようにと切った」と話した。

 環境省によると、現地は奄美群島国立公園の保護区域内でなく、伐採などに規制はかかっていないという。村産業振興課は貴重な景観地を損ねかねないという常田さんの指摘に賛同。今後、村のガイド協会などと自然保護などの勉強会を持ち、群生地の保護と利用のバランスを図ることを検討中だとした。

 常田さんは世界自然遺産登録が再推薦され、IUCN(国際自然保護連合)の現地調査も控える矢先に起きた残念な案件と憤る。「シマオオタニワタリは絶滅危惧種で大事だが、群生地の景観も保全されなければならない。本気でやらないと失ってしまっては、元に戻るのに何百年もかかる。大事にすれば利用できる観光資源にもなる」などと語った。