~歌姫~城南海物語 11=カラオケバトル前編

激戦を交わすライバルもステージを降りれば、大の仲良し(翠千賀=株式会社オフィスコットン提供)

「オペラ魔女」「宝塚史上最強の涙ジェンヌ」「エリートジャズ歌手」。美しきライバルたち

 圧倒的な歌声の城南海は、いつしか「絶対女王」と呼ばれるようになった。名付けの親は、テレビ東京系「THE★カラオケバトル」。「カラオケバトルがなかったら、今の私はない」と南海が言い切るほど、歌姫の誕生に縁は濃い。一方、絶対女王に対抗心を燃やす「美しきライバルたち」は、どう彼女と関わっていったのか。

 オペラ魔女こと、翠千賀は同番組の「異種格闘技戦」で会った。「初登場の私は、楽屋で大音量で発声していて、城さんは私が怖くて私の楽屋の前を通れなかったそうです。後日あいさつさせていただいたら、とっても気さくに対応してくださったんですが、城さん、後ずさりしてました」と、笑いながら初対面を振り返る。一方、「宝塚史上最強の涙ジェンヌ」RiRiKAは、「絶対的女王であり彼女に挑戦者として会ったので、『城南海さんだ!本物だ!』という気持ちでした。静かで清楚で上品な女神のような印象」を受けた。2016年6月だった。また、世界的名門、米バークリー音楽大学をわずか2年半で卒業したエリートジャズ歌手・宮本美季も同年の収録で南海と会っている。「この人がうわさの絶対女王かぁ~!という印象でした。交わした会話は覚えていないのですが、負けません!とライバル心をむき出しにしていたと思います」。切磋琢磨を繰り返すうち、印象はその後、変化したのだろうか。「当時の城さんは、優等生のようで何でも完璧にこなす、若いのに素晴らしい歌手。人間がとてもナチュラル、自身を確立しており、私より精神年齢は確実に上」(翠千賀)。「天然なのかあなぁと思いきや、とてもハキハキとしてて、自分をしっかりと持っている人。穏やかだけれど芯がある、そして完璧主義」(宮本美季)。「おっとり、マイペース、自分を持っている。人と関わることが好きで人見知りしない。誰にも丁寧で悪い印象を与えない。空気が読める。かわいらしくて優しくて菩薩」。一気に語るRiRiKAは、「よく飲む菩薩」と付け加えたが、何を飲むのかは明かさなかった。面白いことに、翠千賀からも同じ単語を使ってのコメントが返ってきた。「城さんからどんな時も出てくるのは、菩薩のようなオーラなんです」。さらに「無駄な音楽家としてのライバル心のようなものは全く出てこない。いつも笑顔で、私が困っていたりすると一緒に悩んでくれたり、真剣にアドバイスもくれる」と熱弁する。

 夢抱いて上京したものの、なれない大都会で大学への通学をこなしながらボイストレーニングなど、デビューへの過酷な日々に「ホームシックになったこともありました」。そんな南海の元に、真っ先に飛んできてくれた母親の姿があった。そこには、娘の歩む道を示すように、慈愛にあふれる光が差し込んでいた。

 (高田賢一)=敬称略・毎週末掲載