大島紬職人後継者不足

紬協組が移転した旧県大島紬技術指導センターには職人を育成する機能が備わっている

高齢化に直面 育成事業者、補助金で支援
紬協組、旧技術指導センター機能活用

 

 奄美を代表する伝統工芸産業・大島紬は、織りや図案、締めといった各製造工程を担う人材の高齢化が進んでいる。60歳以上が全体の9割近くを占め、年齢別では70歳代の従事者が最多。高齢化は後継者不足を表しており、養成施設がある織り以外の職人も育成しようと、後継者育成に取り組む事業者を行政が補助金を交付して支援する。現在、公募中だ。

 奄美群島大島紬振興対策協議会がまとめ公表した資料によると、大島紬の従事者数(2018年3月末現在)は706人で、平均年齢は69・7歳。前年同時期の従事者数は745人、平均年齢69・3歳で、従事者数は減少が目立つが、年齢は緩やかに上昇している。

 ただし従事者のほとんどが60歳以上。合計622人となり、全体の88%に及ぶ。工程別の平均年齢は織り70・8歳、図案69・9歳、締め72・1歳、染色61・6歳、加工67・5歳。織りや締めは平均年齢を上回り70歳超となっている。

 従事者の数では、織工を養成している大島紬技術専門学院がある関係で織りは533人もおり、全体の75・50%を占める。他は図案15人、締め40人、染色30人、加工47人と担い手不足が深刻な状況にあり、年齢別では20代はゼロで、30代でも加工3人、締め・染色2人、図案はゼロと若手の従事者が極端に少ない。

 こうした現状を受け本場奄美大島紬産地再生協議会(会長・前田豊成本場奄美大島紬協同組合理事長)は対策に乗り出す。人材確保と技術の伝承を進め、産業の活性化を図るため、後継者育成に取り組む事業者に対し、奄美大島伝統工芸産業支援補助金を交付するもの。対象事業者は、奄美市・龍郷町内で事業を営む事業者または伝統的工芸品産地組合。奄美市名瀬浦上町にある旧県大島紬技術指導センターの建物内に移転した紬協組は、各部門の職人を育成する機能が施設に備わっていることから、機能活用のかたちで職人育成に取り組む方向だ。

 支援事業の事務局である奄美市紬観光課によると、育成する後継者は奄美市内・龍郷町内居住の60歳未満の人で、申請者(事業者)の下で技術などの習得に取り組み、将来的に技術継承を目指す人。未経験者か就業後2年未満が条件。指導者も2市町で事業を営む事業者または産地組合から推薦された伝統工芸産業技術伝承者。補助額は、▽後継者の給与(1人当たり月額7万円以内)▽指導者の報酬(同10万円以内)―で、補助期間は交付決定日の月から最大2年間。補助金を交付する申請者には延べ5年間の継続雇用を条件にしている。奄美市(276万1千円)と龍郷町(88万9千円)のほか、県が予算化している。

 なお、策定された本場奄美大島紬産地再生計画では「職人の待遇改善」を打ち出している。技術の継承と他産地への技術流出防止へ職人への発注量増、工賃アップなどの待遇改善とともに、職人の登録制度や最低(標準)工賃の設定検討を求めている。補助制度により後継者育成に乗り出し、それによって産地従事者の底上げを図るが、育った職人の業界への定着を図るためにも待遇改善が不可欠となっている。