県議会一般質問

県議会一般質問

コンクリートによる護岸工事の在り方が問われている嘉徳海岸

砂被覆・アダン植栽 「従前の砂丘状況に回復」
「大きな波力でも背後地に浸食及ばない」
嘉徳海岸コンクリ護岸工事で答弁

 6月定例県議会は18日、引き続き一般質問があり、中村素子議員=自民党、阿久根市・出水郡区=、上山貞茂議員=県民連合、鹿児島市・鹿児島郡区=、中村正人議員=自民党、霧島市・姶良郡区=、寺田洋一議員=自民党、鹿児島市・鹿児島郡区=が登壇。公金支出差し止めを求める住民訴訟も提起されている瀬戸内町嘉徳海岸の護岸工事が取り上げられた。工法として決定したコンクリート護岸について全面に砂を被覆してアダンを植えることで当局は「従前の砂丘の状況に回復できる」と明言したほか、台風のような大きな波力時でも背後地に浸食が及ぶことはないとして護岸工事の必要性を強調した。

 現地視察も行った上山議員が質問し、兒島優一土木部長が答弁。この中では、▽護岸工事の目的=計画延長530㍍のうち背後地に住宅や墓地のある約180㍍を護岸整備の必要な区間に。工法は台風時等に発生する外力へ抵抗する重力式コンクリート護岸に加え、自然環境に配慮するため護岸全面に盛り土を行い、アダンを植栽▽住民説明=本格的な工事に向けて今年5月に嘉徳集落全戸を訪問し再度浸食対策の工法や自然環境の保全について説明▽自然回復力現状=検討委員会(海岸水生生物や環境の専門家等で構成)では、「砂浜の砂は回復しているが、砂丘の砂は戻っていない」「自然の形の砂丘が戻るには数十年を要する」などの意見が寄せられたことから、砂浜の砂は戻っても砂丘の砂が早急に戻ることは困難と考える▽護岸コンクリ擁壁が砂の堆積を損なう指摘=検討委から護岸を整備した箇所における砂の経年変化を確認したいとの意見があり、奄美大島内の19の海岸を対象に航空写真調査や現地調査を実施。その結果、事業完了後10年~数十年が経過しているが、砂浜には大きな影響は見られなかった▽港湾築堤マット利用=河川・海岸において浸食防止や根固め工に使用するものであり、直接波の力を受ける消波を目的とする工事には適さないとされており、台風時等に発生する外力に抵抗するための代替工法には(築堤マットは)適さない―を示した。

 築堤マットの使用など護岸工事の見直しを求めた再質問に対し、兒島部長は「(決定した工法により)大きな波力が来たとき最終的に背後地に浸食が及ばないようにできる。従前の築堤マットでは波力に持たないことから、この現場(嘉徳海岸)では護岸のコンクリートが適している」と述べた。また、工法に対する住民の合意については「反対者もいるが、ほとんどから早く整備してほしいという意見をいただいている。合意を得るよう努力したい」とした。

 県が今年3月に制定し、4月1日から施行されている「指定外来動植物による鹿児島の生態系にかかわる被害の防止に関する条例」に関する質問では、奄美・沖縄世界自然遺産登録への貢献が取り上げられた。藤本徳昭環境林務部長は、昨年5月のIUCN(国際自然保護連合)の勧告ではノネコ以外の外来種についても対策を拡充して実施することが求められた中、同条例では特に島嶼部で問題となっている国内や県内由来の動植物について規制対象となる地域を定めて指定し、飼養等にあたっての適正な取り扱いを義務付けることを可能としていることから「IUCNにおいては、奄美・徳之島の生態系の保全に寄与する制度として高く評価していただけるものと考えている。今夏から秋にかけて予定されている現地調査の際に、その取り組みを十分に説明したい」と述べた。