ハンセン病家族訴訟

元患者らが今も入所する奄美市名瀬の国立療養所「奄美和光園」

熊本地裁、国の賠償責任認める
541人に3・7屋円「自信持てる結果」

 国のハンセン病患者強制隔離政策により、患者本人だけでなく家族らも差別・偏見にさらされ深刻な被害を受けたとして、元患者の家族ら561人(20~90歳代)が損害賠償と謝罪を求めた「家族訴訟」の判決で、熊本地方裁判所は28日、国の賠償責任を認め、原告のうち541人に計3億7675万円の支払うように命じた。元患者の家族らによる集団訴訟は今回が初めてとなる。

 原告となった元患者の家族らは、16年2月15日に第1陣59人、同年3月29日に第2陣509人で熊本地裁に提訴。国に対し、1人550万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めてきた。

 裁判で原告側は、「差別や偏見を受ける地位に置かれたこと」、「通常の家族関係の形成を妨げられたこと」が原告に共通する損害だと主張。一方国側は「患者の家族は隔離政策の対象ではない。家族が置かれた状況も千差万別で一様に差別の対象とされたとまでは認められない」などと主張し、請求棄却を求めていた。

 国は1931年からハンセン病患者を療養所に強制隔離する政策を開始。43年に治療薬プロミンの有効性が確認されたものの、53年には「らい予防法」を制定。91年に同法が撤廃されるまで、患者の隔離政策が続けられた。

 元患者らに対しては、98年に同法の違憲国家賠償請求訴訟を提起。2001年には原告勝訴の判決が下され、元患者らには補償金が支払われることとなったが、家族への賠償責任が認められたことはこれまでなかった。

 原告の1人の赤塚興一さん(奄美市、81)は熊本地裁の判決を受け、「原告が自信を持って話ができるような裁判の結果。差別・偏見がなくなっていくと思う」とコメント。実名を公表する人が少なかったことに触れ、「今後は実名を使うようになってもらいたい」とも話した。

 奄美大島でハンセン病問題に取り組む「奄美和光園と共に歩む会」の星村博文事務局長(57)は「これから同じことが起こらないようにするためにも、『昔のことだから』、『時効が過ぎたから』で済ますべきではない問題。国の主張には憤りを感じていたので、責任が認められて良かった。国が控訴した場合、私たちもしっかりと支援していきたい」と語った。同団体は25日、奄美市内で同訴訟に対する支援集会を開いていた。

 厚生労働省は「国の主張が一部認められなかったと認識している。今後の対応については判決内容を精査するとともに、関係省庁と協議しつつ対応を検討したい」としている。