新時代あまみ 山村留学を生かす(中)

譲ってもらったパッションフルーツの受粉作業に精を出す新元さん

収入確保へ農業班の健闘
地域農業の担い手さまざまな助成で支援

 移住者の収入確保のために、活性化対策委員会の農業班が活動して今年で5年目。移住者が果樹や野菜等の栽培を手がけることで校区内の耕作放棄地などの活用が進み、ある程度の成果は表れてきている。

 だが吉久会長は、農業班のより一層の活躍を期待している。村産業振興課によると、村耕作放棄地解消事業を活用し校区内の耕作放棄地などに移住者が就農することで約5㌶の農地を再生。カミキリムシの食害が出やすくなった樹齢26年のタンカンは、若い苗木に改植し生産性向上が図られた。

 農業班はI・Uターン者を地域農業の担い手に位置付けている。I・Uターン者は再生した農地にサトウキビ、タンカン、在来ニンニクなどを栽培し、農業経営に取り組む。

 □サトウキビ増産

 サトウキビ農業は製糖工場の撤退で1992年以降の生産が途絶。98年に黒糖焼酎会社向けに原料として契約栽培されることになり、生産が復活し確実な取引先があることからI・Uターン者の貴重な収入源になっているという。

 サトウキビでは移住者が栽培に携わることで、村全体の生産量も増加。2016、17年産から500㌧を超え、村内の製糖工場だけでなく奄美大島北部の大型製糖工場・富国製糖にも搬入することに。18年産は129㌧が富国製糖に持ち込まれた。

 同課も他の農家同様に、移住者が就農しやすい環境づくりに向けさまざまな助成を行い支援。パッションフルーツでは移住者が栽培する畑地を実証ほ場兼モデル園とし、防風ネットの設備など設置にかかった費用の50%の助成金が支給されている。

 校区がある崎原地区は風や波などが強く当たる地区で、防風対策が他地区より重要。村はタンカンなど果樹で営農する生産者に、イヌマキなど防風林を植栽して風の当たりにくい場所に果樹の苗木を植えるよう働きかけている。

 同課によると、意識の高い生産者も多いと指摘。「I、Uターンの農家でつくる平田の生産者組織は、村開催の地場野菜やサトウキビに関する技術研修会などに声を掛け合い参加し技術などを学んでいる」。

 こうした向上心が実り生産者組織の手塩にかけたタンカンが18年産品評会で、上位30品の中で7位と10位に入る好成績を残した。同課の宝村光治課長補佐は、「生産者組織のリーダーの立場の人が、山村留学などでI・Uターンしてくる次の人のために農地や果樹などを回している。それが周りの人にも波及して好影響となっている」と品質向上の要因を考察する。

 □特産品の開発

 農業の活性化に向けIターン者などが15年に、合同会社アオバトカンパニーを設立。無農薬栽培の長命草(ボタンボウフウ)と在来種の島ニンニクから、加工品としてパスタソースを開発している。

 同村の農産物や特産品の直売所「うけん市場」には、校区内の休耕地を活用し生産された在来ニンニクの加工品などが販売されている。在来ニンニクはインターネット販売も実施。島内外の消費者のニーズが高いこともあり、うけん市場とネット販売で、16年度は300万円を売り上げた。

 活性化対策委員会で監査も務める新元嗣通さんは、平田にUターンして3年目。平田集落内に農地を借りて、パッションフルーツなどの栽培に取り組んでいる。

 5月中旬に新元さんの借りている畑地で、受粉作業を見学した。以前営農していた盛宮信治さんから譲ってもらったパッションの苗木は24本で、1本あたり約100個の収穫を計画。新元さんは儲かる農業を目指し「果実の出来が良かったら、奄美市の青果市場へ出荷したい」と話した。