~歌姫~城南海物語 13(最終回)=新時代への課題編

東京・銀座でのリリースイベントで熱唱する城南海

城南海の魅力が詰まっている最新アルバムのジャケット=ポニーキャニオンアーティスツ提供

証言者が紡ぐ奇跡の10年
時代に合わせた音楽発信、ゲリラライブも慣行グインを融合させる「新時代」の歌姫へ期待!

 テレビ東京系「THE★カラオケバトル」では、「絶対女王」の称号を得た。また、神宮球場などでは、国歌斉唱で野球ファンも魅了した。だが、テレビ離れや放送する地域の問題で「城南海」が、全国区になったとは言いがたい。平成最初の年に生まれた歌姫が、令和の新時代に、どう輝くのか。彼女が所属するポニーキャニオンアーティスツ代表取締役社長・関根優一は、はがゆさと自戒を込めて語る。

 「順調に来てはいます。ですが、まだ彼女の魅力を出し切れていません。宝の持ち腐れになってはいけない」と。一方で、音楽評論家で尚美学園大学副学長として、「Jポップヒストリー」を教えている富澤一誠は、「年間でグインの使い方が自然になってきた。身についた事柄が、彼女の味になっている。歌に対して文句は全くない。いい曲イコールいい歌(ヒット曲)ではないのです」と断言する。ヒット曲は、ファンならずとも切望するところだ。ただ、南海は「時代で音楽も曲も変わるので、自分で発信していくことが大切」と〝売れにくい時代〟こそ、やることがあると認識している。一人でも多くに聞いてほしく決行するゲリラライブも、その一環であろう。

 富澤は、こうも分析する。「『涙そうそう』は、森山良子、ビギン、夏川りみが歌ったが、一般的には夏川のイメージ。森山とビギンは、水彩画に、一方、夏川は油絵に曲を生まれ変わらせ、鮮やかな印象を聞く者の耳に届けているから。いい曲はいいデッサンなので、それを水彩で鑑賞するか、油絵にするかは、聞く人が判断することでヒットにつながる。南海はどちらもできる、力のある人。普通に歌えば、平原綾香のレベルにはなっている、だが、奄美民謡のグインは効果的に曲に出すことで、個性を出している。グインとポップスは180度違うものだが、見事に融合させている」。

 昨年大河ドラマ「西郷どん」の原作者・林真理子が南海の歌声に感涙したように、NHKの中にもファンが生まれ「紅白歌合戦出場」を期待する声も上がり、城南海サイドも動いたという。「だが、紅白は翌年の大河が対象」のためやむなく見送りとなった経緯がある。10年間で一番悲しかったことは「身近な人が亡くなったこと」。そう口にする南海は、その悲しみを奄美の四季に映し、作詞作曲もした。故に人の心を揺さぶるのだ。だからこそ、皆に聞いてほしい。個人的な話で恐縮だが、父親を昨年失った際、何度彼女の歌声に励まされたことか。10年の軌跡を追い掛けるにあたり、証言をいただいた皆様に感謝したい。欠ける月、満ちる月の下、夢に向かい大海原を進む南海の過程をあらためて文字にすることを誓い、いったん終了とする。トウトナガシ~。
 (髙田賢一)=文中敬称略