組織力 勝利もたらす

6期目当選に沸いた尾辻氏の陣営(鹿児島市の選挙事務所で)

「一人でも欠けたら迎えられなかった」
野党統一候補・合原氏、追い上げも出遅れ響く
参院選かごしま

 参院選鹿児島選挙区(改選定数1)は、当初から優勢とみられていた自民現職の尾辻秀久氏(78)=公明推薦=が支持基盤を手堅くまとめ6選を果たした。「『チーム森山(自民党県連会長・森山裕衆院議員)』あげての応援をいただいた。鹿児島県の国会議員は他県がうらやむほどまとまりがあり仲がいい。一人でも欠けていたら、きょうのこの日(当選)を迎えられなかった」と尾辻氏が語ったように、国会議員・地方議員が牽引役となりフル稼働しての組織力が勝利をもたらした。

 現職の尾辻氏に、いずれも無所属新人だが、野党統一候補の合原千尋氏(39)=国民民主推薦=、同じ保守系の元霧島市長で自民県議だった前田終止氏(71)が挑む三つどもえの構図。結果は尾辻氏が29万票余りを獲得、合原氏に約8万票、前田氏には17万票余りの差をつけた。尾辻氏は県内市町村のほとんどでトップ得票を果たし、譲ったのは霧島市(前田氏)と姶良市(合原氏)のみだった。大票田で都市部特有の無党派層が多い鹿児島市の票の動きが注目されたが、尾辻氏は1万票差で合原氏を振り切った。

 開票結果がもたらされた21日夜、勝因で尾辻氏がまず挙げたのが自民党議員の応援。「我が事として応援、支援をいただいた」と表現。厚生労働大臣、参院副議長といった要職を経験した党の重鎮を支えたのは国会議員だけでなく、4月に選挙を終えたばかりの県議、さらに市町村議員も奮闘。「自分の選挙以上に手を振った」「厳しいとされた地域には徹底的に入り込み、支持を訴えた」といった県内全域にわたる取り組みで集票を重ねた。

 こうした自民党議員の集結・フル回転は、自民党籍を持つ対立候補への票の流れの警戒、危機感がばねになったという見方がある。陣営には医師会や農政連など主要友好団体だけでなく500超の団体から推薦状が寄せられたが、団体や企業の支援も有力な後ろ盾となった。

 「政界一新!おごじょの挑戦」を掲げ、県内4野党(立憲民主、国民民主、共産、社民)が共闘し選挙戦に臨んだ合原氏の陣営。「若さ女性」を前面に打ち出し、女性や無党派層の支持取り込みに活路を見いだそうと運動を徹底。終盤、浮動票の多い鹿児島市などで追い上げを見せ陣営も手応えを強調したが、初めての国政選挙への挑戦に加え、候補者調整の難航で一本化決定が公示の約1カ月前と出遅れが影響、知名度不足を挽回できなかった。

 「地方ファースト」を掲げ、地方政治での経験をアピールした前田氏。保守層の切り崩しへ組織に頼らない草の根選挙を展開し、奄美など離島にも足を運んだほか、終盤には鹿児島市での遊説を繰り返し浮動票の取り込みを目指した。しかし、地盤の霧島市など一部地域以外での支持を広げられなかった。

 今回の参院選は、12年に一度統一地方選と重なる「亥年=いどし=選挙」。地方議員や有権者の「選挙疲れ」から投票率が低くなるジンクスが指摘されてきたが、まさにジンクス通りとなった。県内投票率は初の50%割れで、前回を10・11ポイント下回る45・75%と大きく低下した。奄美の市町村も全てが前回を下回った。

 低投票率は政治への無関心・政治離れか、それとも衆院選と異なり政権交代のない参院選がもたらしたものなのか――。選挙権が18歳以上に引き下げられた中、若者の関心を高めるため主権者教育の充実と同時に、どこに住んでいても投票が容易なインターネットの活用など投票の在り方の検討を求める意見もある。