鍾乳洞で「遭難」騒ぎ

初の鍾乳洞内の捜索・救助活動に備えた徳之島地区消防組合職員ら=27日午後2時10分、伊仙町目手久


無事帰還も体調不良で病院搬送された住民も=午後2時30分ごろ

警察・消防出動
伊仙町目手久 教訓残す

 【徳之島】27日午後0時50分ごろ徳之島署と徳之島地区消防組合本署に、伊仙町目手久にある鍾乳洞の入洞観察に出かけた男女6人が、予定時刻を過ぎても戻らないと通報が。遭難事故を視野に救急救助隊員らの入洞の直前、予定時刻から遅れること約2時間後「全員帰還」を確認。関係者の胸をなで下ろさせた。

 くだんの鍾乳洞は、同町目手久「徳之島なくさみ館」(闘牛場)から山手に約2㌔。雑木林をかき分けて段丘を下ると入洞口。流水を伝ってスムーズに1時間以上進むと出口が。途中には、ほふく前進で辛うじて通過できる難所もあるという。
 同署や地区消防、住民の話を総合すると、6人は目手久地区住民を中心にした60~70代。「地元の鍾乳洞を知ろうと」と、島内の鍾乳洞に詳しい第一人者(71)=天城町在住=に要請。当初予定した8人のうち2人は体調不良で断念。午前11時ごろ入洞し、別の出口に「午前0時10分ごろに出る…」と、軽い気持ちで残留組に伝えていたのが〝ボタンの掛け違い〟の始まりに。

 救助工作車や救急車など救急・救難隊17人や徳之島署員らが急行した。酸素ボンベを背負った捜索救助隊員5人が、経験のない鍾乳洞内の捜索に向かっていた午後2時20分ごろ、「全員帰還」の吉報が届く。体調不良の男性1人が念のため救急車で病院に搬送された。

 別の地元住民男性(74)によると「過去に大学生(探検部)らと同鍾乳洞に入った。50㍍付近までは誰でも行けるが、その奥は、素人だと帰れなく恐れもある。通り抜けるのに約2時間かかった」とも。

 ガイド役の男性は「1時間ちょっとで帰ると言ってしまった。遠足で景色の良い所に立ち寄るのと同じ。3時間ぐらいと話せば良かった。申し訳ないと思っています。数十年間、鍾乳洞の探検をしているがこんなトラブルは初めてです」と話した。

 今回の出動例に同消防組合側は「山岳や水上での救助訓練は実施しているが、鍾乳洞は初めて」。世界自然遺産登録に向け類似例も予想されることから、「まず島内の各鍾乳洞の位置や構造を把握。(洞内)訓練も必要と思う」とした。