ノネコ捕獲作業1年経過

モニタリング調査のカメラで撮影されたノネコの親子(提供写真)

捕獲と発生源対策の両立
効率求め試行錯誤続く

 環境省奄美群島国立公園管理事務所が、ノネコ管理計画に基づく捕獲作業を開始してから1年が経過した。同事務所は作業員増員やカゴわなの工夫など、捕獲効率を上げるため試行錯誤している。また捕獲に注力するだけでなく収容されたノネコのスムーズな譲渡や、山中にノラネコが入り込まないようにする島内5市町村の発生源対策も重要だという。

 捕獲作業は収容施設である「奄美ノネコセンター」が奄美市名瀬浦上に整備され、モニタリング調査で作業エリア(16平方㌔)を選定して昨年7月17日から開始。作業員3人がエリア内に設置したカゴわな100基を点検などして、捕獲したノネコはセンターに移送して収容され譲渡希望者に譲渡されていた。

 昨年7月から今年6月末までで、ノネコ75匹を捕獲し73匹を希望者に譲渡。2匹は収容中に発病したり不慮の事故で命を落としたが、安楽死処分はゼロとなっている。

 同事務所の早瀬保奈実国立公園管理官によると、スタートしてからしばらくは捕獲数が低調だったため作業量などをこれまでに二度見直し。今年1月からは作業エリアを2倍にして、作業員は4人に増員。5月からは作業エリア80平方㌔に拡大され、作業員は6人に拡充されたという。

 また作業ではこの75匹とは別に、飼い猫とみられるネコ3匹も捕獲。内訳はマイクロチップを装着したネコ1匹、首輪をしたネコが2匹だった。3匹は1匹が飼い主に引き渡されており、残りは希望者などに譲渡された。

 作業エリアが拡大したことで、ハシブトカラスなどの在来種の混獲も発生。「カゴわな内のえさを抜き取られないようにメッシュして保護したえさを用いたら、ハシブトカラスの混獲が減った。ノネコだけを捕獲できるカゴわなの導入を検討している」(早瀬管理官)。

 早瀬管理官は捕獲作業が1年経過して、作業前に比べてノネコが減って来ていると実感するものの、モニタリング調査で移入してきたネコが確認されている点を懸念する。「作業で捕獲数は上がってきているが、減少傾向はつかめない。移入も確認されており、5市町村の発生源対策も重要となる」と語った。

 主な発生源対策としては、ノラネコに対するTNR事業が挙げられる。ノラネコを捕まえて不妊手術を施し、元に放してノラネコの繁殖を抑制する事業だ。2018年度までは奄美大島5市町村が個別に取り組み、13年度からの累計で約3200匹を処置した。

 島内5市町村でつくる奄美大島ねこ対策協議会(事務局=奄美市環境対策課)は、今年度からTNR事業を一本化する。市町村個別では一部の自治体でしか実施されていなかったモニタリングも、今年度は受託する業者が捕獲や手術と合わせて実施するという。

 同事務局は依然としてネコを放し飼いしたり、ノラネコにえさを与える住民がいることから住民に対する啓発活動を重視。今後も住民にネコの適正飼養や、飼い猫の登録、マイクロチップ装着などの周知を図る考えだ。

 またノネコセンターが収容数50匹と限られていて、できるだけ多くの譲渡対象者の確保も求められる。事務局は現在、11の個人・団体を譲渡対象者に認定。一部からの意見も踏まえ、より多くが認定されるよう譲渡対象者の認定要領見直しを検討している。

 今秋には、二度目となるIUCN(国際自然保護連合)の現地調査が控える。早瀬管理官は、「協議会と連携して捕獲作業や譲渡などを両立してやっていることを、しっかり説明してアピールしたい」と話した。

 前回の現地調査ではマングース防除事業やノネコ管理計画策定などに対して、外来種対策として一定の評価が得られたという。奄美大島の生態系保全に向け住民への普及啓発や、捕獲作業と発生源対策のより一層の連携が必要だろう。
(松村智行)