国民年金納付率 徳之島3町40%台と低迷

無年金回避へ独自文書で啓発も
2018年度状況

 厚生労働省がまとめた自営業者らが入る国民年金の保険料納付状況によると、2018年度奄美群島市町村(日本年金機構奄美大島年金事務所管内)の平均納付率は56・1%となり、前年度比1ポイント上昇した。市町村別では徳之島の3町が40%台と低迷しており、このままでは老後の無年金者が増加するとして免除制度の周知含めて独自に文書を作成し、年金制度への関心を高める啓発に乗り出す自治体も出ている。

 国民年金は老後を支える終身保障だが、障害基礎年金や遺族基礎年金支給といった現役世代の万が一時も保障している。19年度(19年4月~20年3月分)の保険料は月額1万6410円。「まとめて前払いがお得」として前納(割引額3500円)を呼び掛けているほか、口座振替、クレジット納付、電子納付も可能となっている。

 奄美の市町村の納付率(18年度)をみると、最高は宇検村の79・8%で、管内平均を23・7ポイントも上回っている。一方、最低は伊仙町の42・7%で、平均を13・4ポイント下回っている。この伊仙町だけでなく天城町(44・5%)、徳之島町(46・6%)も納付率が40%と低迷。徳之島3町の納付率は前年度も同様で、低い順で徳之島町(43・3%)、伊仙町(43・8%)、天城町(47・7%)。3町以外に納付率40%台のところはない。なお、加入者が最も多い奄美市の納付率は56・1%で、わずかながら前年度(55・4%)を上回った。

 納付率最低の伊仙町は「将来への備えとして老後を支える制度だが、対象者の意識が低い。サトウキビ農業が盛んで収入額が大きい農家も存在するものの、費用などを差し引いた収益の低さから生活実態が厳しい農家が多く年金保険料の納付が低調となっている」(町くらし支援課)。所得が少ないときや失業などにより保険料を納めることができない場合には、本人の申請によって保険料の納付が免除される制度がある。この免除(全額免除・一部免除)申請、納付猶予申請も所得状況を明確にすることへの抵抗などから手続に難色を示す傾向にあるという。

 こうした状況を受けて同課は「このままでは老後の年金だけでなく、万が一の保障も受けることができない町民が増える」として年金制度への理解を図る啓発文書を作成。免除制度の理解を含めて住民の認識を高める取り組みに乗り出している。

 厚労省が公表する納付率は1年間で加入者が保険料を納付しなければならない月数に対し、実際に納付された月数の比率を示している。そのため、免除・猶予された分は除いて計算される。奄美群島平均の納付率も上昇したが、18年度の全国平均は68・1%と7年連続で上昇している。しかし、免除・猶予された分を含めた実質的な納付率は約40%(全国平均)に下がることから、「老後に満額の国民年金を受け取れる人が多いとは言えない。預貯金など金融資産が少ないと高齢者の貧困(生活困窮)が今後広がる可能性がある」との指摘が出ている。