幻想的〝白布の舞い〟で魅了

幻想的な〝白布の舞い〟で魅了した徳之島町手々の「むちたぼり」(15日)

徳之島町手々 伝統の「むちたぼり」

 【徳之島】徳之島町北端の手々集落(嶺田正秀区長、62世帯113人)で15日夜、盆踊りと併せた伝統行事「むちたぼり」があった。頭から白布を被った男性陣と浴衣姿の踊り連が、唄者ら三味線・太鼓・歌にのせて幻想的で軽快な踊りで家々を訪問。日ごろ静かな過疎集落だが、町内外からの見物客たちも交え活気に包まれた。

 手々集落の「むちたぼり」は、稲作文化に根ざした収穫感謝や豊作祈願などの意味を持つ「ムチタボレ」「アキムチ」などと同列の秋祭りの一種。頭上からすっぽりと白布をまとって扇子と棒を手に、満月の月明かりの下で踊る男性陣の幻想的ないで立ちは一種独特。背景や意味など口承には諸説あり、見物客たちの関心を誘っている。

 本来は秋祭り行事だが19年前からは、出身者ら帰省客の多い月遅れ盆(最終日)に引き寄せて盆踊りと併催。台風10号の影響で昨年同様、屋内(同体育館)開催も想定されたが、逆に残暑を和らげる絶好の祭り日和に。

 午後5時ごろからまず、手々小中学校の児童生徒ら10人(留学生2人)ら子ども連が約15軒を訪問し、元気いっぱいの歌踊りを披露して喜ばせた。訪問先からはお餅や菓子などご祝儀が贈られた。

 そして、家々で送り盆の儀礼を済ませた午後8時すぎ、長老格の唄者らを先頭に大人の踊り連約40人が同校を出発。慣例通りにかつての「殿地」と称される井上キクエさん宅を皮切りに4小組合の各代表宅を訪問。各庭先では幻想的な〝白布の舞い〟を披露し、見物客たちも楽しませた。家回りの後は校庭に戻って盆踊りの輪も広げた。

 嶺田区長(72)は「今年も集落のみんなの協力で夏を乗り越えることができた。今後もこの団結で大切な伝統行事を守っていきたい」と話した。