瀬戸内町離島で誘殺続く

瀬戸内町離島で誘殺続く

ミカンコミバエの防除で有効なテックス板

有効なテックス板 メーカー、備蓄対応・価格考慮
ミカンコミバエ

 果実・果菜類の害虫・ミカンコミバエが11月に入り、瀬戸内町の離島で相次いで誘殺されている。台風や季節風の状況から周辺発生国(台湾など)からの飛来要因が見いだせず、果樹農家などからは戸惑いの声も聞かれる。関係機関が尽力している初動対応ではテックス板(誘殺板)による防除が有効な中、県内にあるメーカーは資材の備蓄対応とともに価格面も配慮するなど協力姿勢を打ち出している。

 農林水産省植物防疫所がホームページで公開している今年度の誘殺状況によると、鹿児島県内では9月の17~23日の週に屋久島と黒島(三島村)で1匹ずつ計2匹の誘殺が確認されて以降、誘殺ゼロが続いていた。

 ところが11月に入り状況が一変。県経営技術課の発表によると、6日に加計呂麻島と請島の3地点で4匹確認。これを受けて、翌7日から、県では国や地元自治体などと連携し、トラップ(わな)の増設やテックス板の設置、寄主植物の調査など初動対応をとっていたところ、既設のトラップで8日、新たに加計呂麻島と請島の5地点で計7匹(いずれも雄で、1地点のみ3匹、他は1匹ずつ)の誘殺が確認された。

 1基のトラップで複数の誘殺は6日も1地点(2匹)であり、いずれも請島の設置箇所。ミカンコミバエの飛来につながる発生国から奄美周辺を通過するような台風の接近は最近なく、強風も観測されていない。定着に結びつく可能性がある発生が警戒されているが、JAあまみ大島事業本部果樹専門部会長の大海昌平さんは「飛来要因、また気温が低下している11月という時期もあり、今回の連続した誘殺には『なぜ』という戸惑いがある。ただ、新聞報道などを通し誘殺状況が毎回情報公開され、関係機関により初動対応が徹底されており、緊急防除以前に比べると農家としては安心感がある。農家も防除の取り組みで関係機関への協力など常に危機感を持ちながら対応していきたい」と語る。

 初動対応で進められているのが、▽トラップ増設による調査▽寄主植物の調査▽誘殺板による防除―の取り組み。このうち現在の時期の寄主植物の主体はイヌビワだが、野生化に加えガジュマルのように根の生育が旺盛のため除去が難しい。雄成虫を誘引する香料と殺虫剤を混ぜ、木材繊維板に染み込ませたテックス板が防除では有効なことから、今回の対応では誘殺が確認された加計呂麻・請島全域だけでなく、隣りの与路島にも全域にテックス板を設置し、広範囲にわたって防除を推進している。

 多量の数が必要となるが、テックス板の通常の価格は1枚265円もする。予算の確保、テックス板の有効期間(2年間)を見据えた備蓄対応の懸念がある。テックス板を製造するメーカーは1社しかなく、鹿児島市に本社があるサンケイ化学㈱が鹿児島県内のほか、系列企業を通して沖縄県内にも供給している。同社は「関係行政機関には年に1回、単価見積書を提出し、その評価によって契約をいただいているが、価格については20年近く据え置くなど考慮している。また、資材不足に陥らないよう備蓄にも取り組んでいる。防除により害虫被害を食い止めることで生産農家の経営が安定するだけに、メーカーとしても協力していきたい」との姿勢だ。

 なお、資材の備蓄に関してはテックス板を購入する植物防疫所も対応。門司植防では管内の各機関が対応し、資材不足となる出先があった場合には、他の機関の備蓄資材で補っている。