ありし日に思いはせ「島尾忌」

ありし日に思いはせ「島尾忌」

文学碑に献花した島尾伸三さん(奥)、潤井理事長(手前)

「全国に伝えること使命」 長男・伸三さんら献花

 奄美にゆかりある作家・島尾敏雄(1917~86年)の没後34年にあたる12日、奄美市名瀬小俣町の島尾敏雄旧居前で2019年度「島尾忌」が行われた。長男の島尾伸三さんら親族を含む約30人が参列。会場では奄美が誇る文筆家への黙とう・献花を捧げ、ありし日に思いをはせた。

 「死の棘=とげ=」などの著作が知られる島尾は海軍震洋隊長として瀬戸内町加計呂麻島で終戦を迎える。1958年からは県立奄美図書館の前身・県立図書館奄美分館の初代館長に就いた。分館長時代の65~75年の10年間、同旧居に住んだ。

 行事はNPO法人島尾敏雄顕彰会(潤井文子理事長)が主催し、旧居前で毎年開催している。今年は島尾の妻・ミホの生誕100年にあたることから、潤井理事長は今年実施した講演会や、ミホが育った加計呂麻島をめぐるツアーなど行事を報告した。

 黙とうの後、伸三さんと潤井理事長が並んで献花。式には伸三さんの妻で写真家の潮田登久子さん、島尾の孫にあたる漫画家の真帆さん(41)、ひ孫の万史郎くん(4)も参列した。伸三さんは同旧居での父母の姿を語り、「この家が残ったおかげで、遺族として、いろいろなことが思い出すことができる」と関係者らに感謝の言葉を告げた。

 式終了後、潤井理事長は「顕彰会の会員は年々減っているが、先輩たちがせっかく作った会。存続させ、全国の人に『島尾敏雄という作家がここに住んでいた』ということを伝えることが私たちの使命」と語った。