重複障がい越え保育園で勤務体験

重複障がい越え保育園で勤務体験

保育園児らに、自ら準備した絵本画像を読み聞かせる前和輝さん(大島養護学校高等部1年生)=13日、伊仙町の「わかば保育園」で

「子どもたちが好き」
大島養護高等部の前和輝さん
伊仙町の施設が受け入れ

 【徳之島】県立大島養護学校高等部の後期「産業現場等における実習」が11日~22日の日程で、計41の企業・施設の協力で実施中だ。同徳之島支援教室(徳之島町亀津・徳之島高校内、10人)からは2年生の男子が保育園に実習入り。要介護の重複障がいを越えてパソコンを操作して絵本のスキャニング画像を持参。落語調の読み聞かせを行うなど、ちびっ子らの人気者になっている。

 実習は、生活体験の拡大を図り、将来の自立と社会参加に向けて必要な知識・技能・態度を身に付けることなどを目的に年2回実施。各地区の企業や就労支援施設など多くが受け入れ協力している。だが、幼児教育現場への希望と受け入れは珍しいという。

 「子どもたちが大好き。(実習で)子どもたちとふれ合えればと思って、この保育園の園長先生に(担任の)先生からお願いして、受け入れてもらった」と、屈託のない笑顔で話すのは脳性麻痺・肢体不自由の重度障がい(要介助)のある同高等部1年生、徳之島支援教室に通う徳之島町徳和瀬の前和輝さん(16)。受け入れ保育施設は伊仙町犬田布、社会福祉法人青松福祉会「わかば保育園」(児玉純一園長)だ。

 保育園での実習時間は午前10時~午後2時(土・日曜除く)。介護者と車いすが欠かせないが、保育士ら職員とともに園児たちと気さくに交流。午後1時からの本の読み聞かせタイムでは、不自由な手指でパソコンを操作して準備してきた絵本の画像スクリーンで読み聞かせ、合間にはクイズも投げかけてわかせる。

 和輝さんは、井之川中在学時の担任の勧めもあって落語に挑戦し、「井之川亭輝之助」の〝芸名〟で、島の芸達者バラエティーショーなどにもゲスト出演しているちょっとした有名人でもある。同園の関係者は、「運動会や夏祭りでもふれ合っています。一本調子ではなく、落語風に登場人物に合わせて声を変えるため、夢中になって聴き入っている子が多かった」。

 和輝さんは3日目の感想で「子どもたちとは初日から楽しくて仕方がなかった。ぼくの障がいの事もストレートに聞いてくるので、『最初からなんだよ』と答えました。あと何日もあるのでたくさんふれ合いたい」とにっこり。

 巡回指導の担任・関拓也教諭(43)は「肢体不自由などはイスに座っての単純作業例が多いが、園長先生のご理解もあって、こういうケースは珍しく、すごくありがたい。重複障がいの子どもたちにも働く場の体験が提供できるよう、こうしたケースが広まって欲しい」と話した。