「障害者週間」に共生社会を考える

奄美大島内の公共施設に広がりつつある駐車場のブルーゾーン(龍郷町りゅうゆう館)

広がる “ブルーゾーン”の取り組み
誰もが思いやりを向け、受ける形に

 今月3日からきょう9日までは「障害者週間」。奄美大島5市町村が足並みをそろえ市役所・役場での関連展示を行ったほか、理解を深めるための職員研修などを行う自治体もあった。同週間について書かれた内閣府のホームページによると、障がい者福祉への関心を高め、障がいを持った人があらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めるために設けられたものとのこと。広報ポスターには「障がいのある人とない人がお互いに尊重し支え合う『共生社会』の実現を目指して」のキャッチフレーズが輝く。せっかくの機会なので、共生社会実現に向けた奄美での取り組み事例を見てみたい。

 2017年に設立した県・奄美大島5市町村行政担当者、福祉団体、民間企業関係者などで構成される「奄美地区障害者差別解消支援地域協議会」。今年8月にあった今年度第1回会合で、公共施設の駐車場への“ブルーゾーン”の設置が提案された。

 ブルーゾーンは「思いやり駐車場」・「譲り合い駐車場」とも呼ばれるもの。駐車スペースの一部をスカイブルーに塗装することで、「困っている誰かのために空けておく場所」として認識してもらうことが目的だ。

 奄美大島内の公共施設ではこれまで、奄美市役所・ハローワーク名瀬のみにあったが提案後、龍郷町と瀬戸内町が町役場に設置。龍郷町では11月末までに、▽りゅうがく館▽りゅうゆう館▽とおしめ公園▽どぅくさや館▽島育ち産業館―の町内5カ所の公共施設でもブルーゾーンを確保した。龍郷町役場総務課は「これまでも車いすマークはあったが、一般の人が駐車しているとの声もあった。地域を先導する意味でもブルーゾーン化した。実際に効果が出ている」。このほか、宇検村、大和村でも今後設置の予定があるという。

 ブルーゾーンは、障がいのある人のために利用証を発行し、駐車車両を限定する「パーキングパーミット」とは違い、あくまで利用者の善意に訴えるもの。同協議会の事務局を務める奄美地区障がい者等基幹相談支援センター「ぴあリンク奄美」の相談支援専門員・福﨑伸吾さんは、「電車やバスの優先座席に近い感覚。障がいがあってもなくても、誰もが思いやりを向け、受けるような形が良い」と話す。

 スカイブルーという配色は奄美らしさの演出だけでなく、先進地の事例などから色を判別しづらい人にも見やすいことが分かっているという。「見た目には分からない障がいもある。そうした人たちへの配慮も必要」と福﨑さん。また、ルールをあえて明文化していないのも特徴だ。「守らなければいけないこと」ではなく、利用者や施設の職員が「どういったことを配慮すれば良いのか」を考えてもらうきっかけとなる。

 公共施設以外にもブルーゾーン化の取り組み事例はすでにあり、島内のスーパーなどでも目にすることができる。福﨑さんは、「ゆくゆくは公共施設全体でブルーゾーンが設置され、民間にももっと広がれば。みんなで足並みをそろえて島の風景を変えることで、協議の意味も出てくるし、駐車場を利用する観光客にも知ってもらえる」と語る。障がいの有無に関わらず思いやりを持って人に接するというコンセプトで進められるブルーゾーン化の取り組みは、まさに共生社会の考え方だ。

 こうしたさまざまな取り組みを国民に知ってもらう週間中のこと。「桜を見る会」の招待者名簿をシュレッダーにかけた問題に関し、安倍晋三首相は「担当である障がい者雇用の短時間勤務職員の勤務時間などとの調整を行った結果…」という説明を行い、批判の的となった。この問題のどこに障がいの有無が関係しただろう。自身の責任逃れのための言い訳に“使った”ともとれる件=くだん=の言葉には、思いやりのかけらもない。おひざ元の内閣府が公開しているポスター見つめなおし、「障害者週間」の目的、共生社会の意味を振り返ってもらいたい。
   (西田 元気)