大和村地域支え合い事業

大和村では11団体がすでに活動を続け、地域共生社会を育んでいる(写真は名音ティダの会)

住民立ち上げた福祉団体、集落で活動
地域共生社会を読む道標に

 今年1月1日の当社新年号で、大和村が2011年から取り組む「地域支え合い事業」を取り上げた。〝住民流福祉〟とも呼ばれ、地域住民が主体となって各集落で通う場・集まる場などを立ち上げて、高齢者を元気にする多様な取り組みを実践。それぞれに課題はあるものの活動はしっかりと地域に根付き、そこに関わるお年寄りたちの生き生きとした表情は印象的だった。

 新年号でも少し触れたが厚生労働省は昨年末、〝地域共生社会〟の構築に向けた「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」の最終とりまとめを公表した。〝地域共生社会〟とは、地域包括ケアシステムを基盤に16年の「ニッポン1億総活躍プラン」に盛り込まれた目標で、サービスの支え手や受け手という立場を固定せず、誰もが制度や分野の枠を超えて地域づくりに参画することを目指すもの。とりまとめでは、個人や家族が抱えるリスクが多様化する中、自治体における包括的な支援体制の在り方、関係機関や地域住民の支援の新たな方向性を示した。

 市町村の包括的な支援体制の整備に向けては、「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の三つを一体的に行う新たな事業の創設を提言。社会福祉法人については、「地域づくりに向けた支援」に関連して様々な実践が展開されていることに触れ、「取り組みがさらに広がり、地域のニーズに応じて多様な支援、活動が積極的に展開することが求められる」とした。

 これまでの社会保障では、リスクを想定した現物支給や、社会福祉では高齢者介護や生活保護などの制度で専門的な支援を行ってきたが、今回の骨子では、福祉以外の政策領域との連携を明確に打ち出した。新事業は社会福祉法人の任意事業と位置付け、厚労省は今年の通常国会に改正法案を提出する。

 今回の提言では、大和村の「地域支え合い事業」と重なる共通点も多い。事業の核は、双方ともにこれまでの「コト」から「人」に視点を移し、複合的な課題に対応できることを目指している。新事業は、18年施行の改正社会福祉法の「包括的な支援体制の構築」を後押しするもので、制度の間に埋もれがちな人や世帯を把握することも主な狙いだ。

 大和村では、「地域支え合いマップづくり」を通して地域住民の関係を把握することから始めた。既存の相談支援事業を再編し横断的に漏らさず対応する「断らない相談支援」は各団体のリーダーがそれに近い役割を担った。「参加支援」では集落のニーズに合わせた通う場を開いてみんなが声を掛け合い、ボランティアが好意的に支えることでつながり続ける「地域づくり」につなげていった。

 だが一方、提言とは異なる箇所もある。活動の主体は住民側にあることだ。提言では要所や窓口は各機関の専門家などが占めているが、大和村では地域住民が率先して地域のことを考え「参加」「交流」の場を創出。自治体である村は裏方に回り、「やってみましょう」の精神でサポートすることで、住民の積極的な参画を促すことができた。

 ここにたどり着くまで大和村でも試行錯誤はあった。リーダー育成や各種教室なども定期的に開いたが大きな効果はなく、最終的には、〝顔見知り〟や〝ご近所さん〟が手掛けることに行き着いた。地域のことはそこに住む地域の住民が一番よく知っているということだったのだ。

 現在大和村では、住民が立ち上げた福祉団体は10集落で計11団体ある。その活動に同じものはなく、各々個性にあふれている。地域共生社会の推進はもう間もなく訪れるが、大和村の取り組みが新たな歩みを読み解く一つの道標・モデルになるのではなかろうか。
 (青木良貴)