「青取りタンカン」入荷

地元市場に持ち込まれた「青取りタンカン」。続発し流通すると、産地づくりに深刻な影響を与えることになる

減酸早いも着色不十分、果肉硬く
「特性出る2月以降収穫を」
地元市場

 果樹農業の柱・タンカンの収穫適期は2月以降だが、地元市場である名瀬中央青果㈱に果実の着色が不十分な「青取りタンカン」が15日持ち込まれ、16日の競りにかけられた。気温が高い関係で減酸が早い傾向にあるが、関係機関は「タンカン本来の紅が乗っておらず、果肉も硬い。品種の特性が出る時期に収穫し出荷しなければ産地としての信頼を失うことになる」と生産農家の理解を呼び掛けている。

 奄美市住用町の生産者が持ち込んだと見られており、中央青果によると5㌔入りのビニール袋で約50㌔持ち込まれた。同青果担当者は「傷みなど問題があれば持ち帰ってもらうこともあるが、競りにかけられた。酸切れが早く、侵入防止用の柵を設けてもイノシシ被害があり、『全部やられるよりはと収穫した』と生産者からは聞いている」と話す。

 市場に入荷した青取りのタンカンは関係機関も確認。上場(山地)・下場(平場)にある果樹園を問わず、タンカン収穫は2月以降が根付いてきた中で、1月中旬に収穫され市場に持ち込まれたことを落胆、深刻に受け止めている。「イノシシによる食害は果樹だけでなくサトウキビ、野菜と多くの作物に被害が及び、しかも各地に拡大しており、気持ちはわかるがタンカン本来の特性はまだ出ていない。着色で紅は乗っておらず、青が残っている。中身も果肉の熟成が進んでいないため、じょうのう(果肉の粒を包む房)が硬い。こうした青取りが取引され、島内での販売だけでなく島外にも流出すると、奄美産はマイナスイメージが持たれ特産品としての価値を下げてしまう。今後の販売に影響するのではないか」と指摘する。

 また、イノシシ被害については地上に近い下枝部分の食害が特に目立つことから、「下枝をそのまま垂らすのではなく、支柱などで枝を上にあげる方法をとれば防げる」とアドバイスする。落ちた果実を園内にそのまま放置しないことも必要だ。

 適期収穫の明確化へJAでは定期的に果実分析を行っている。大島事業本部によると、1月10日時点の平均糖度は10・4度で、酸度の平均は1・29%。JAは「2月までまだ期間があり、さらに糖度が上がる。平年に比べ寒が来ていないため全体的に色着きが悪い状況にあり、着色を見ながら収穫してほしい」と呼び掛けている。