クルーズ船観光に打撃

新型コロナウイルスによるクルーズ船観光への影響が懸念される(資料写真)

新型肺炎影響
スケジュール開示で不安払しょく
患者受け入れ、県内14機関

 世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響が県内でも表れ始めた。奄美新聞の取材に対し、県側は14日現在、「県内での発症報告は受けていない」としたものの、2月に入って鹿児島港=鹿児島市=へ寄港予定だった外国船籍のクルーズ船8隻がキャンセル。受け入れ港を持つ自治体では関する問い合わせが増えたとして寄港船舶の情報開示などの対応に追われ、奄美の観光関係者からは「寄港取り止めによる観光需要の落ち込みなど影響は避けられない」と懸念する声も出ている。

 県は鹿児島港の1~4月入港計画で当初見込んでいた29回のうち、14日までにバハマなど外国船籍7隻(延べ8回)の寄港キャンセルを発表。いずれも新型肺炎感染の影響としている。

 県観光課によると2月10日現在、調査対象とする県内20宿泊施設のうち17施設で約4900人泊のキャンセルを把握。主に中国、香港からの予約だったという。今後の入込数の減少が懸念される中、同課は「感染収束後の観光需要の盛り返しが図られる施策を検討していかなければならない」との見方を示した。

 奄美市の名瀬港では、2~3月の期間中、クルーズ船寄港数は延べ4回(日本船籍3、外国船籍1)を予定。同市紬観光課は「ぱしふぃっくびいなす」のクルーズルートの情報をホームページで開示している。バハマ船籍「カレドニアン・スカイ」の3月19日入港にいまのところ変更はないが、「最新情報を提供し、住民不安の払しょくにつなげたい」(同課)。

 県や同市は、国の対応を注視しながら、クルーズ船寄港の積極的な情報提供につとめる方針だ。

 クルーズ船寄港実績が伸びている名瀬港の2020年度予定は16回(外国船籍6回)だが、国内外で新型肺炎の感染ルートが取りざたされている状況から、鹿児島港のように今後、キャンセルが出る可能性は小さくない。

 あまみ大島観光物産連盟の境田清一郎事務局長は近年、クルーズ観光が安定的に続いていたことで、土産品販売やツアーの手配を進めていた事業者への打撃を懸念。「世界的な問題に業界内の影響は計り知れない。東京五輪も控え、早期収束を願うのみ」と話した。

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 防疫面での対応も急がれる。新型ウイルス感染による肺炎が確認された場合、県は「感染症指定医療機関」で患者を受け入れる方針。帰国者との接触による外来受け入れ先に14医療機関(14日現在)を決めているが、「国の指導で機関名は公表していない」という。

 感染患者数が広がる懸念から対応は急務として、県健康増進課は「他の医療機関と調整を図りながら、受け入れ先を増やしたい」とした上で、症状が疑われる場合、行政窓口や最寄りの保健所への連絡を促している。