新型肺炎の影響か乗船客減

クルーズ船「ぱしふぃっくびいなす」の乗船客が島内観光を楽しんだ

オプショナルツアーでは出発前、乗船客にアルコール消毒を行った

クルーズ船寄港 船内イベント中止も
バスツアーでは感染対策も

クルーズ船「ぱしふぃっく びいなす」(2万6594㌧)が24日、奄美市の名瀬港観光船バースに寄港した。同船は南西諸島を巡るツアーでの来島が多く、毎回約400人前後のツアー客が奄美を訪れているが、全国で感染事例が広がっている新型コロナウイルスによる肺炎の影響を受けてか今回は約180人と大きく減った。島内のオプショナルツアーの参加も例年より少なめ。その影響が、地元の観光産業にも影を落とし始めてきた。

ツアーは神奈川県の横浜港発着とする「南西諸島島めぐりクルーズ8泊9日」で今月18日に出港した。乗船客は全員日本人、乗員とスタッフを合わせて約450人が乗船。沖縄での停泊後、最後の寄港地として奄美に来島した。

今月初めに大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船客から新型肺炎感染者が確認されて以降、横浜港での隔離措置が現在も続く。国内外の感染症例の広がりが連日報じられる中、国内初の感染確認となったクルーズ船を見る社会の目は厳しい。

現状を踏まえ船舶関係者は奄美新聞の取材に対し、船内での感染予防を強調。ツアー直前には乗船客に体調を把握する健康アンケートを取り、サーモグラフィで体温確認しているという。仲田敬一船長は「船内では全員にマスク着用と手洗いを呼び掛け、安心して旅を楽しめるようつとめている。今のところ体調不良を訴える人はいない」と述べた。

一方で、島内団体を招き、船内で郷土芸能を披露するイベントは中止。また物産ブースの出店は岸壁に場所を変更しており、船舶側が配慮したとみられた。

騒動の中、乗船客からは「運営側の安全対策を信頼しており、不安はない」との声が相次ぐ。長野県の男性(72)は「クルーズ観光で奄美に何度か来ており、久しぶりに市街地を散策したい。体調は問題ない」。奄美初来島の東京の女性(78)は「この船が好きで、クルーズは年に複数回参加。都会の方が感染リスクは高いのでは」。

この日、乗船客は奄美大島島内のスポット巡りや体験プログラムを満喫。ただ当初140人を見込んでいた島内ツアーはキャンセルが出、最終的な参加は90人未満となった。

ツアーバスを手配する㈱しまバス(本社・奄美市名瀬)は予定台数を2台減らし6台に。同乗する運転手とガイドにマスク着用と手洗いの徹底を指示した。ツアー出発前にはバスの乗降口でガイドが搭乗者一人一人の手にアルコール消毒液を掛けた。

しまバス側は「新型肺炎を意識したものではない」としたものの慎重な対応が見られた。

奄美の観光団体によると同船はほぼ毎年名瀬港に寄港する、奄美にとっても馴染みの深いクルーズ船。今年度寄港は7回目。クルーズ人気が高まり始めた5年前には500人近い乗船客が訪れたケースもあったという。

「これまでの同船搭乗者数の平均は300~400人。今回は来島者数、オプショナルツアーともに半分以下」と観光関係者は驚きを隠せない。ある関係者は「クルーズ観光の経済貢献は大きい。寄港中止は痛手」として今後を注視している一方、市内小売店の女性(32)は「正直(感染が)怖くないとは言えないが、接客は大切な仕事なのでしようがない」と複雑な心境を明かした。

船は同日午後7時、歓送セレモニー後、帰港地の横浜に向かった。

名瀬港の寄港計画によると、3月までに、「ぱしふぃっくびいなす」2回(3月6、20日)、「カレドニアンスカイ」(同月19日)を予定している。