未来のエネルギーで動く船寄港

寄港した「レース・フォー・ウォーター」号=知名町白浜港=

地元の子ども達からグラジオラスの花束を受け取る乗組員

知名町白浜港花束手渡し交流
海洋プラごみ問題深刻「減らす努力を」

 【沖永良部】化石燃料を使わず、再生可能エネルギーなどで世界を一周している船「レース・フォー・ウォーター」号が3日、知名町の白浜港に寄港した。地域住民を対象に船内見学が行われ、参加者は船を動かす未来のエネルギーと海洋プラスチックごみ問題について理解を深めた。1~2週間ほど滞在する予定。

 スイスの環境保護団体「レース・フォー・ウォーター財団」によるプロジェクト。太陽光・水素・風力の三つを動力源にした船を使い、世界を巡りながら海洋プラスチックごみの汚染状況の調査や寄港先で海洋保全の啓発活動を行っている。2017年にフランスを出発し、カリブ海や南米、オセアニアの各国を通過、先月下旬に沖縄県石垣島に到着した。乗務員は5人、沖永良部は23番目の寄港地。

 同日は、午前9時30分ごろ入港した。今井力夫町長がフランソワ・マーティン船長(40)に黒糖焼酎をプレゼントし、地元の子ども達が乗組員にグラジオラスの花束を手渡した。

 船内見学では、乗組員が船で行っている研究や海洋プラスチックごみの影響を説明し「世界中の海でプラスチックが見つかっている。海面に浮いているのはほんの一部で、ほとんどが海底に沈んでいて見えない」「マイクロプラスチックは鳥や魚だけでなく、それを食べる人間の体内にも入ってきている」と話した。このほか、海水から水素を取り出し電気を作るシステムや船をけん引するカイト(たこ)の仕組みなども紹介した。

 マーティン船長は「世界の海を見てきたが、問題は深刻。石垣島から沖永良部島の間で20回にわたってサンプルを採取したが、多くのマイクロプラスチックが見つかった。人間の生活でプラスチックを完全に無くすことは難しいが、減らすことは出来る。みんなで行動してほしい」と呼び掛けた。

 同財団の活動を支援する特定非営利活動法人ゼリ・ジャパンの竹内光男事務局長は「2050年には、海洋プラスチックの総重量が海にいる生物の総重量と同じくらいになると言われている。私たちの命である海を守るためにも警鐘を鳴らし続けていきたい」と語った。

 同町では新型コロナウイルスに考慮し、乗組員の体温や健康状態を確認。異常はなかった。