休校中受け皿 児童クラブへの取材通して

キックベースをする児童ら

おやつを食べる児童ら

生命力と立ち向かう姿
あおぞらの下に「おさなご」発見する
消毒液など消耗品不足 運営に課題も

 3月21日、奄美市名瀬小浜町の伊津部小学校内に開設されているあおぞら児童クラブ(川内美和子会長)を訪れた。休校期間中の土曜日とあってしんとした校内で、同クラブの周辺だけはにぎやかだ。近づいてみると、子どもたちは校舎の外壁に貼りだされた紙を見ながら話し合ったり、考え込んだりしている様子。校内のあちこちにクイズが掲示されているようだ。

 子どもたちは校内を探索しながらクイズを解いて回っている。子どもたちを誘導する職員や、解き終えた問題をはがして回る保護者の姿もある。子どもたちが頭と体を使って遊べるよう工夫を凝らした、手作りのオリエンテーリングだ。
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 同クラブは周辺小学校の児童約70人が利用し、平日は約40人を預かるという。この日は土曜日で児童は20人ほど。児童指導員4人が見守る。本来は遠足の日だったが、新型コロナウイルスの影響で中止となったという。遠足に付き添う予定だったという保護者が数人、指導員と協力しながらゲームを進行していた。

 ゲームを終えた子どもたちの前に出て、筆者がしどろもどろの自己紹介をすると、子どもたちがわっと群がってきた。次々に話しかけてくれ、取材ノートに名前を書き込んで教えてくれる。真っ先に話題に挙がったのは人気少年マンガ「鬼滅の刃」のこと。筆者も友人に勧められていたので、チェックしてくれば良かったと後悔する。

 オリエンテーリング後は昼食となった。テーブルの上に色とりどりの弁当が並ぶ。良く見るとおかずがキャラクターの形をしていたり、ふりかけが小さな星型になっていたり。忙しい中でも、子どもたちが喜ぶようにと弁当を手作りする保護者の心遣いが見える。

 筆者も4年生~6年生の女子5人組のテーブルについて一緒に昼食をとった。話題は爪の手入れやスキンケア、ダイエットのことなど、小学生であっても女子らしい。

 昼食後校庭に出て、指導員の声掛けのもとドッジボール、キックベース、野球を行う。指導員と保護者、そして筆者もチームに加わり、一緒に汗を流した。筆者は一塁分の距離を全力疾走しただけで息が上がり足腰が痛んだが、子どもたちは強い日差しをものともせず走り回っていた。5年生の南椛蓮さんは「楽しい。ドッジボールが好き」とほほ笑む。

 一緒にプレーする保護者からも笑顔がこぼれる。保護者会長の南博伸さん・まゆみさん夫妻によると、同クラブは保護者の集まりの良さが自慢の一つ。指導員に任せきりにするのではなく、保護者と指導員が一緒に運営する体制ができているという。4年生の子どもを持つ常盤信幸さんも「共働き世帯なので児童クラブがあって助かる。一人でも留守番はできる年齢だが、児童クラブに預けた方が安心感がある」と話す。

 一方で、新型コロナウイルスの流行により、同クラブの運営にも課題が出てきた。同クラブでは毎日検温を実施し、手洗いうがい、アルコール消毒を励行。タオルも布製からペーパータオルに変えた。体温計などの備品や、消毒液、ペーパータオルなどの消耗品は、品薄の中、保護者が探し回って何とか調達している状況だという。

 川内さんら指導員は「児童クラブを開けているのに、使用する消耗品は手に入りにくい。休校期間中、開所の指示をするなら消耗品が行き渡るよう国や自治体が図らってほしい」と話した。

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 臨時休校は指導員の体力的にも負担となった。急に決まった休校と児童クラブの開所指示。終わりが見えず、休みがない日々だったという。23日からの学校再開で、ようやくひと段落付いた形だ。

 校庭から戻り、教室でおやつのアイスやフルーツを食べる。子どもたちに、学校が再開するのは楽しみか尋ねると、「楽しみ」「あんまり」など、ばらばらな答えが返ってきた。4年生の河野玲華さんと湊紗耶さんは「楽しみだけど、朝早起きするのはちょっと面倒」と笑った。

 おやつを頬張る子どもたちの笑顔を撮ってクラブを辞した。かつて教育家・羽仁もと子さんは「おさなごを発見せよ」と説いた。今回、同クラブへの取材を通して、新型コロナウイルスの流行にも負けない子どもたちの生命力と、協力し合って立ち向かう保護者、指導員の姿を発見した思いだった。
 (佐々木菜々)