名瀬・龍郷町で突風被害

玄関扉が吹き飛ばされた住宅の住民に状況を聞き取る気象庁機動調査班(29日、奄美市名瀬佐大熊町)


飛ばされたトタン屋根の代わりに応急的にブルーシートをかける作業を行う住宅(29日、龍郷町安木屋場)

ガラス破損、屋根飛ばされる
気象庁派遣 竜巻発生も視野に調査

 奄美市名瀬や龍郷町で28日夜、突風による窓ガラス破損やトタン屋根が飛ばされるなどの被害が発生した。けが人はなかった。名瀬測候所は竜巻の可能性も視野に29日から、奄美市名瀬佐大熊町と龍郷町安木屋場に気象庁機動調査班(JMA―MOT)として職員を派遣し、現地調査を行っている。

 名瀬測候所によると、同市名瀬・龍郷町で突風被害が発生したとみられる同日午後8時ごろは、奄美地方を寒冷前線が通過し大気が不安定な状態に。通常、寒冷前線は北西寄りの風を伴うことが多いが、同市名瀬の観測地点(同測候所内)では、午後8時3分に最大瞬間風速40㍍の“南西”の風を観測。また、1時間に22㍉の強い雨も観測されている。

 突風があったと見られる時間帯、奄美地方北部南部とも雷注意報が発表されていた。また、気象庁は午後8時20分に、奄美地方に竜巻注意情報を発表していた。

 同測候所は28日のうちに大島地区消防組合の情報提供を受け、同機動調査班の現地派遣を決定。29日に測候所職員3人で編成する調査班が現地入りした。竜巻が発生したのかを調べるため、被害にあった住宅の住民に当時の状況をヒアリングするなどした。30日は同市名瀬仲勝町を調査する。

 調査班として現地を確認した名瀬測候所の佐々木康夫予報官は「調査段階にあり、はっきりとしたことは言えない。30日も被害状況の確認、住民からの聞き取りを行い、判断していきたい」とした。

 龍郷町は被害の一報を受け、29日午前中に安木屋場集落の被害状況を調査。▽屋根一部損壊1件▽窓ガラスの損壊1件▽倉庫の屋根一部損壊1件▽船の転覆2件―を確認したと報告した。

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 突風により奄美市名瀬佐大熊町では民家の壁が剥がれたり、玄関扉が吹き飛ばされたりする被害が発生。自宅の窓ガラスが割れ、玄関が吹き飛ばされたパートタイマーの50歳代女性は「隣に住む親の自宅で食事をしていた午後8時過ぎごろから急に風が強まった。ビリビリという音がし、風の塊が押し寄せきて、家が持ち上げられるような感じだった。収まってから自宅を確認すると、2階寝室の窓ガラスが割れ、反対側の壁に破片が突き刺さっていた」と話す。

 奄美市名瀬仲勝町では、倉庫の屋根のトタンの一部が飛ばされ、上にめくれる被害が出た。倉庫の内側から見ると、トタン3枚が飛ばされ、8枚がめくれているようだった。近くに住む80歳代男性は「午後8時ごろ、横なぐりの大雨と強風がものすごく、3分間ぐらい続いた。竜巻かと思った。家の花鉢が倒れ、洗濯物も飛ばされた」。

 同市名瀬和光町の国立療養所「奄美和光園」内では、講堂近くのアカギの上部付近の枝が多数折られ、周辺の道路や川の中に散乱していた。28日夜は当直だったという男性職員は「午後8時半ごろ、雷の後に大雨・突風が30分ぐらい続いた」「翌朝見に行くと、アカギの枝が多数散乱していた。大きな台風のときもアカギは被害を受けなかったのに…」と不思議そうに話した。

 龍郷町安木屋場では港で漁船の転覆被害も。所有者の廣貞夫さん(83)は「家が動くほどの風で、船の様子を見ようと家から出たが、立てないほどだった。船に積んでいたものは飛ばされてしまった」と途方に暮れていた。同集落内で自宅の屋根が飛ばされた辺木智眞子さん(80)は「ジェット機のような轟音で、経験したことないような風だった。寝室が水浸しになり、風がやんでから近隣の妹の家に避難した」。辺木さんの家では29日午後、同集落壮年団により、屋根が飛ばされた部分にブルーシートをかける作業が行われた。