宴会自粛でタクシーなど売上低迷

屋仁川通りで、利用客から声がかかるのを待つタクシーや運転代行

貸し切りバス 4月以降の予約ほとんどなし

新型コロナウイルスの感染が全国で拡大するなか、奄美大島でも様々なイベントの自粛が相次ぎ、人の移動も鈍くなっている。例年、3月は教職員や県職員などの異動に伴う送別会などが行われるが、2月末に政府の自粛要請が出されて以降、多くが中止され、宴会帰りにタクシーや運転代行などを利用する人も減少、「売上が例年の半分程度に落ちこんでいる」といったタクシー運転手の声も聞かれるなど、影響が出ている。

27日午後9時過ぎ、奄美市名瀬の繁華街「屋仁川通り」は、利用客を探しながら一方通行の通りを流すタクシーや通りの端に停車し、客から声がかかるのを待つ運転代行業の車両が数台連なっていた。

同通りで乗客を探すタクシー運転手の男性(63)は、「30分近く客を探しながら移動しているが、なかなかいない。例年だと3月は送別会シーズンで、週末は常連客からの電話予約でいっぱいの日もある。毎日忙しくて休みが取れないくらいなのに、今年はさっぱり」と話し、肩を落とした。

市内のタクシー会社によると、売上は例年の6割程度にとどまっている。経営者の男性は「3月は年間を通しても売上のトップシーズン。職場や学校、部活動など様々な組織で送別会が行われるため、利用者も多いが、今年はかなり少なくなっている」という。それでも「奄美での感染者が出ていないので、個人客や観光客の利用がまだ若干ある。万が一、島内で感染者が出たらと思うとぞっとする」と話す。

別のタクシー会社の関係者も「スポーツイベントや学校の遠足などもなくなり、3月は貸し切りバスの予約がほとんどキャンセルになった。4月以降も全く予約がない状態で、このままでは会社経営にも大きな支障が出かねない」と不安を吐露した。

タクシー運転手の多くは歩合制で、売上が減れば給料も減る。バス運転手も多くは、非正規労働者で、バスの運転がなければ、給料も減ってしまうという。タクシー会社の経営者は「できるだけ雇用を確保したいが、4月以降も売上が回復する見込みはない状況では、いつまで雇用維持できるかわからない」と話し、「政府には早急に支援策を示してほしい」と訴える。

利用客が少ないのは運転代行業も同じだ。龍郷町を中心に利用者が多い代行業の男性運転手は「利用客数としては例年の7割程度だが、多くは龍郷町内の飲食店から自宅に帰る客。いつもだと、屋仁川から龍郷町に帰る客も多いが、3月以降、めっきり少なくなった。距離が短くなった分、売上にも影響している」と話す。

新年度になる4月は新入生や新入社員らの歓迎会などもあるが、別の運転代行業の男性運転手は「できるだけ繁華街に来てほしい思いもあるが、感染リスクなどを考えると、そう言っていられない。当分厳しい状況は続きそうで、今は耐えるしかない」と話した。