IUCN勧告時期不明

奄美・沖縄世界自然遺産 環境省「冷静に準備」

 奄美・沖縄の世界自然遺産登録を巡る諸手続きの時期が不透明になっている。ユネスコの諮問機関であるIUCNの勧告は例年5月、世界遺産委員会の6週間前に出されるのが通例となっている。しかし、新型コロナウイルスの影響で同委員会が延期となり、勧告も例年通りに出されるのか見通しがつきにくい状況だ。環境省は「勧告がいつになっても冷静に準備する」としている。

 6月29日~7月9日に開催予定だった第44回世界遺産委員会が新型コロナウイルスの影響で延期となった。これに伴い、IUCNの勧告も延期されるか、あるいは例年通りの時期に行われるかについては、外部には全く情報が伝えられていない。日本側が今後の見通しを立てることは困難な状況だ。

 「奄美・沖縄」世界自然遺産候補地科学委員会の星野一昭・鹿児島大学特任教授は以下のように推定する。「結論としてはよくわからないのが現状。しかし、昨年秋の現地調査後、11月にはIUCNの報告書が提出されている。2月には日本政府からの追加情報も送られた。IUCNの立場としては、これ以上待っていても追加情報が出るわけではなく、勧告を遅らせる理由もないと言える。しかし、委員会を主催する世界遺産センター側の立場としては、委員会が延期になった分会議文書の作成を遅らせるはずなので、勧告を待つようIUCNに要請するかもしれない。IUCNの立場と世界遺産センターの立場という二つの要素があるので、どうなるかは全く分からない」。

 筑波大学大学院の吉田正人教授によると「今回のような延期はめったにないこと。フランスの世界遺産センターでも、スイスのIUCN本部でも職員は自宅勤務をしており、業務が遅れる状況にある。勧告は委員会の6週間前という通例に合わせ、遅らせるのではないか」とのこと。

 環境省自然環境局・自然環境計画課の担当者は「今回の委員会延期の発表を冷静に受け止めている。情報がないが、例年通り5月に勧告が出てもいいよう、淡々と冷静に準備していく」と表明した。