コロナ・ショック 試練の先に~11~

山田事務局長


事業主の相談を受ける村山さん

貸付制度は個人事業主の命綱
奄美市社協・山田事務局長と職員ら

 奄美市名瀬長浜町の奄美市社会福祉協議会(山田春輝事務局長)には、新型コロナウイルスの影響で収入が減少した事業主らが連日相談に訪れる。「緊急小口資金」や「総合支援資金」の貸付を受けるためだ。飛び込みの相談も多く、社協職員らは対応に追われる。金融機関など、複数の窓口に相談して自分に合った融資を見つけることが必要だ。

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 「緊急小口資金」や「総合支援資金」といった社協の貸付制度は、もともと困窮世帯の支援が目的。新型コロナウイルスの影響による特例により、コロナ禍で収入が減少した人も対象となっている。県の休業要請を受けて休業し、前の年の同じ月と比べて収入が減少した人は、1カ月あたり20万円を上限として貸付を受けることができる。

 奄美大島では3月末ごろから飲食業や観光ガイド関連、タクシー運転手、カラオケ店などの個人事業主からの相談が増加した。3月25日~5月6日までで54件の相談が寄せられたという。日を経るにしたがって1日あたりの相談件数は増え、5月8日は飛び込みも合わせて17件の相談が寄せられた。山田事務局長をはじめ職員らは対応に追われ、業務はパンク寸前だという。「事前に電話連絡を」と職員の堀志保子さんは呼び掛ける。

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 それでも、窮状を訴える一人ひとりに寄り添って相談を受け、手続きを行う。9日も、一人の女性が相談に訪れた。同市名瀬の繁華街・屋仁川通りでスナックを営む女性は、県からの自粛要請により未だ店を開けることができず無収入だ。「(営業自粛は)6日までだと思って必死に耐えてきたのに、20日まで延長されてもう耐えきれないと思った。家賃交渉もしているが…」と疲弊した表情。

 社協の貸付制度のことは口コミで知ったという。「友人から『まずは社協に相談を』と勧められて来た」と話す。

 同社協主査の村山好仁さんが相談室に現れ、安心させるような笑顔で雑談を交えながら手続きを進めていくと、女性の表情にも徐々に元気が戻ってきた。「ここ(社協)に相談の電話を入れただけで先が見えた気がした。電話した日はぐっすり眠れた」と安心感を語った。

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 「緊急小口資金」の手続きができるのは、実は社協だけではない。労働金庫でも手続きの取り次ぎを行っている。住民票や通帳など、すぐに揃えられる書類で、郵送での手続きが可能だ。

 また、ひとり親家庭の場合、県の母子寡婦福祉連合会からも貸付を受けられる。上限は社協の貸付と同じく20万円だ。

 各金融機関も、県の「新型コロナウイルス関連緊急経営対策資金」の窓口となっている。事業主向けに、4000万円を上限として融資を受けることができ、県が利息を立て替えるというもの。

 「複数の融資制度があることを知ってほしい」と村山さん。社協に寄せられる相談件数が多い背景については「金融機関より社協の方が相談しやすい印象があるのかもしれない」と推測する。

 山田事務局長は「制度の情報を知らないために支援を受けられない人がいるかもしれない。新聞や国・県の広報などを読んで情報を知ってほしい」と話した。