イノシシ被害、過去最悪か?

イノシシの全損被害にあったサトウキビほ場(徳之島町手々)=同町農林水産課提供

出没エリアも拡大 「管理不足」指摘する声も
徳之島キビ食害、前期の2倍強

 【徳之島】徳之島地区では、イノシシによる農産物食害のエリアが拡大の一途にある。2019年/20年期産サトウキビに対する南大島農業共済組合の同被害認定面積は前期の2倍強の2673㌃(19日現在査定)。特に徳之島町が77%を占めた。出没〝生息エリア〟の拡大が顕著化した背景に、対策施設の「管理不足」を指摘する声が絶えない。

 南大島農業共済組合(本所・伊仙町)によると、徳之島地区の19/20年期産キビに対する同農業保険の認定状況は、▽総被害筆数127筆(うち全損49筆)、計2673㌃で前期比1517㌃増に倍増した。町別では▽徳之島町2061㌶(1382㌶増)▽天城町4323㌃(82㌃増)▽伊仙町180㌃(50㌃増)。被害補償額は減収量や平均糖度などで査定中。キビ共済の補償は台風やメイチュウなど病害虫被害が主だったが、イノシシ被害は過去6年間で最高を更新。同共済制度史上でも最多の可能性が高い。

 同島地区のキビ共済加入率は約36%(面積率約41・7%)と低く、未加入や未申告分を含めたイノシシ食害の実体面積は「その数倍以上」との指摘も。

 地域的には、徳之島町が3倍強に急増。同町農林水産課糖業担当によると、従来は島北部の中山間地域を中心とした被害エリアだったが、最近は海岸部のほ場にもテリトリーを拡大。無縁視された集落エリアでも出没が始まり、野菜・果物類にも被害が波及。エリアの拡大傾向は天城、伊仙両町でも同様に顕著化しているという。

 徳之島、天城両町は11年度~14年度にかけて鳥獣被害対策事業(国・県補助)でイノシシ侵入防止柵(高さ約140㌢、網目10㌢)を総延長約157・3㌔にわたって設置した。各地域に保守管理も委ねているが、掘削や松枯れ倒木などによる損傷部分の補修に手が回らず、「里に下ったイノシシが山に帰れずに、逆にコロニーを形成している」など指摘も根強い。ほか、農家の高齢化や機械化に伴って畑に足を運ぶ回数の減少、いわゆる「人の気配の薄れ」を背景に挙げる声もある。