アマミノクロウサギにも感染可能性か

国の特別天然記念物・アマミノクロウサギ

兎ウイルス性出血病 米国で流行、有識者ら注意喚起

 RHDV2ウイルスによる「兎ウイルス性出血病(タイプ2)」が米国で流行している。野生のウサギ、家畜のウサギを問わずに感染し、米国南西部では数千匹が死亡している。奄美大島、徳之島に生息する国の特別天然記念物・アマミノクロウサギは今回の流行で死亡しているアナウサギやワタオウサギと遺伝的に近く、もし日本で同ウイルスが流行すれば感染の可能性がある。

 農研機構動物衛生研究部門のホームページによると、兎ウイルス性出血病は致死率40~90%と高い。感染したウサギは鼻血などの症状を呈し、数日で死亡する。治療法はなく、ワクチンは開発されているが日本では承認されていない。ヒトに感染することはないが、自然界で蔓延=まんえん=すれば生態系が脅かされるおそれもある。

 香川大学農学部動物栄養学研究室でアマミノクロウサギの研究をしている川﨑淨教(きよのり)助教によると、同ウイルスはアマミノクロウサギにも「確実にとは言えないが感染する可能性がある」という。

 同ウイルスは、ヨーロッパアナウサギやサバクワタオウサギの間で猛威を振るっている。アマミノクロウサギは遺伝子解析による系統樹ではアナウサギに近く、その次にワタオウサギに近い。

 感染経路は▽感染個体と健康な個体との接触▽ハエや蚊などの昆虫▽捕食者の糞―など。同ウイルスはカリシウイルスに属し、アルコール消毒が有効ではない。

 川﨑助教は「感染が拡大した場合にはアマミノクロウサギの生息域になるべく立ち入らないこと。立ち入る際には車両消毒や長靴、踏み込み消毒槽が必要」と対策を予測する。

 熊本県のウサギ専門の動物病院で、エキゾチックペット研究会に所属する「うさぎの病院」の中田至郎院長によると、国内でペットとして流通するウサギはほとんど国内で繁殖させたものであり、感染の危険は少ないという。

 「欧米から食用として輸入されるウサギの冷凍肉にウイルスが付着している可能性がある」と中田院長は話す。日本に同ウイルスが持ち込まれないようにするためには、ウサギ肉輸入に何らかの規制をかける必要があるのではないかと指摘する。

 アマミノクロウサギの子育て写真で知られる写真家の浜田太さんは「離島という狭い地域に一度ウイルスが入ったら手の施しようがない。アマミノクロウサギは世界自然遺産登録の象徴的存在。クロウサギを守るために、世界でこのウイルスが流行していることを住民が意識共有する必要がある。ウサギ肉やペット用ウサギを奄美に入れない対策が必要」と警鐘を鳴らした。