種保存のドラマ始まる

金見崎海岸に現れた国天然記念物オカヤドカリの大群(円内は大型のムラサキオカヤドカリ)=27日午後10時半ごろ、徳之島町

無垢の美しい自然が保たれている金見崎海岸(今月25日)

国天然記念物オカヤドカリ
徳之島町金見崎海岸

 ○…徳之島町の東北端に位置し、奄美群島国立公園(第3種特別地域)でもある金見崎(かなみざき)海岸では、国指定天然記念物・オカヤドカリの大群の生命誕生、種保存のためのドラマが今年も始まった。悠久の自然サイクルの中で毎年梅雨明け前後に始まり、夏本番への季節の移ろいも密かに伝える風物詩の一つだ。

 ○…その観察ポイントは、金見集落公民館前の海岸砂浜を北に約200㍍。白亜の金見崎灯台(昨年、鉄塔灯台に建て替え)の足もとに広がり、河川や大規模農地開発もなく赤土流出など開発汚染の波から免れている通称「真崎(まさき)浜」。唯一の悩みは外国製を中心とした漂着ごみのよう。

 ○…探索したのは27日午後10時30分ごろ。最大満潮の約2時間前だったが、予想外のやや強い風。経験則から期待を失いかけたが、オカヤドカリの群が〝密集・密接〟状態で砂浜や岩を覆っていた。一部は、宿貝と体の間に卵を抱えたまま孵(ふ)化させたゾエア幼生をタイドプール(潮だまり)で体を揺らしながら放出。その瞬間、赤紫色のボウフラ状の無数の幼生(1~2㍉)たちが泳ぐ姿が肉眼でも確認できる。

 ○…金見崎海岸はヤドカリの〝一斉産卵〟やウミガメの産卵上陸、約1億年前の泥岩とされるメランジ堆積物、造礁サンゴなど稀有な自然環境を誇る。その自然や集落の歴史・文化など「足元の宝」を活用し、地元金見集落の活性化に挑んでいる一般社団法人・金見あまちゃんクラブの元田浩三理事長(65)は、「そっとしておいて欲しいアマン(ヤドカリ)、観察を通して大自然に親しみたい人間。金見は気軽で安全な観察ポイント。ジレンマを感じるが、踏みつけたりしないで大切に観察を」と話した。

 〇…「大潮の満潮時、無風の熱帯夜」などピークに、規模の差はあるが、例年8月上旬ごろまで続くという。