筆談ボードは情報保障の第一歩

筆談ボードは情報保障の第一歩

筆談ボード贈呈の様子

 

マスクによる読唇術の困難さを筆談で解消しようと呼び掛ける大野会長ら

 

難聴者・中途失聴者協会が市に寄贈

 

 あまみ難聴者・中途失聴者協会(大野歓会長、正会員20人、賛助会員10人)は10日、奄美市の朝山毅市長を訪れ、聞こえにくい人などが使うことのできる筆談ボードを12冊寄贈した。併せて市の要約筆記者派遣事業の取り組みについて感謝を伝えるとともに、要約筆記者の養成事業を奄美群島広域事務組合で行ってほしいと要望した。

 同市において聴覚障がいで身体障がい者手帳を取得している人は432人。このほかにも難聴で困りごとを抱える人が多数いるという。難聴者や中途失聴者にとって手話を習得することは難しく、筆談や要約筆記など、視覚によるコミュニケーションが不可欠だ。

 大野会長によると、難聴者は音そのものは聞こえても言葉として聞き取ることが難しく、周囲の話から取り残された疎外感を味わう傾向にある。筆談ボードは聞こえにくさで困りごとを抱える全ての人が情報保障(その人の知る権利を保障すること)を得るために必要なツールだ。

 同協会はこのほど、同市笠利町の就労継続支援施設まんまるとコラボレーションしてオリジナルの筆談ボードを作成。会員が話し合いを重ね、携帯に便利なA5サイズの手帳型ボードを考案した。ペンとボード消しがセットになっており、ボード部分が古くなったら交換できる仕様にするなど、使いやすさにこだわって作られた。

 寄贈されたボードは市役所2階フロアのカウンターを中心に設置される予定。障がいや年齢によって聞こえにくさを抱える人、場面かん黙症などコミュニケーションに困難さを抱える人が使うことができる。

 新型コロナウイルス対策で窓口職員がマスクを着用するようになり、聞こえにくい人は唇の動きを読むことができなくなった。また、窓口に設置されたアクリルボードが声を遮って聞こえにくくなるなど、筆談ボードや透明マスクの需要が増してきているという。

 また、市が取り組む要約筆記者派遣事業に感謝を表明した上で、養成事業についても広域事務組合で取り組んでほしいと要望した。

 要約筆記者は講演会や学校行事において、その場の話を要約して文章で伝える役割を担っている。パソコンで要約する方法と手書きによるノートテイクの方法がある。今年は鹿児島本土の養成講座をオンラインでつなぎ、奄美からも受講することができる。

 ボードの寄贈を受けた朝山市長は「要約筆記者の派遣は今年から導入した事業。これからも要望に応えてできるだけのことをしたい。少人数の会合・大人数の講演会など、状況に応じた支援をしたい」と決意を新たにした。