富士レビオが開発した抗原検査キット(同社ホームページより)

新型コロナ 抗原検査で陽性判明事例
短時間で結果も無症状には向かず

 与論町で新型コロナウイルスの感染が拡大している。同町では抗原検査によって陽性が判明した事例もある。抗原検査はPCR検査に比べ短時間で結果が出て、特別な機器もいらないため、全国の医療機関で実施することができる。一方で、PCR検査より感度が低く、無症状感染者の特定には適さないという特徴がある。

 新型コロナウイルスの検査には、大きく分けて2種類がある。「新型コロナウイルスにかかっていたか」を調べる検査と、「新型コロナウイルスに現在かかっているか」を調べる検査だ。PCR検査や抗原検査はいずれも後者に当たる。

 PCR検査が「サンプルの中に新型コロナウイルスの遺伝子配列があるかを調べる」のに対し、抗原検査は「抗体を用いて抗原を見つける」検査だ。抗原とは、ウイルスや花粉、アレルギー物質など、病気を引き起こす原因となるものをいう。サンプルの中に抗原があれば、抗体抗原反応で抗体とくっつき、ウイルスを見つけ出すことができる。

 抗原検査をするには、サンプルの中に多量のウイルスが含まれていることが必要だ。そのため、明らかな症状が出ている場合の陽性判定や、発症後2~9日の陰性判定に適している。約30分で結果が判明し、特別な機器もいらない。

 一方で、サンプルの中に少量のウイルスしか含まれていない場合、すなわち無症状の場合や発症後10日以上経過している場合には、抗原検査だけで結果を判定することが難しい。その場合には追加でPCR検査を行い、本当に陰性かどうか確かめる必要がある。

 抗原検査は5月13日に厚生労働省により保険適用となった。医療機関が都道府県と委託契約を結べば行政検査として実施することができる。

 抗原検査に使われる検査キットは富士レビオ㈱が開発したエスプライン® SARS-CoV-2。当初は同キットの不足により、全国でも一部の病院でしか抗原検査を実施していなかったが、同社の尽力によりキットの生産数が充実し、6月8日から全国の医療機関で実施できることとなった。

 短時間で結果が出る抗原検査だが、やはり感度の高さから、PCR検査の導入が待たれる。社団法人大島郡医師会の有川清貴事務局長によると、同医師会は6月1日に公益社団法人鹿児島県医師会に対し、奄美群島でも速やかにPCR検査を行えるよう働きかける要望書を送ったという。

 「対岸の火事ではない。我々も保健所の協力要請があればすぐに検査を実施できるよう諸準備を整えている」と有川事務局長は話した。