侵略的外来種「ホテイアオイ」侵入

「徳之島ダム」の湖面に侵入、繁殖エリアを急拡大させていた侵略的外来種の「ホテイアオイ」=11日、天城町瀬滝

奄美最大級の「徳之島ダム」全景

徳之島ダム湖で繁殖し群落抜本対策検討へ
土地改良区や行政

 【徳之島】天城町秋利神川水系の「徳之島ダム」(同町瀬滝住木野、有効貯水量730万㌧)は、国営かんがい排水事業で2017年度に完了して3年。全島域の受益農家対象の農業用水をたたえる湖面の一部には、要注意外来生物で世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれている水草「ホテイアオイ」が侵入。死角の入江部分の数か所は既に、小型ボートからの人力作業では手に負えない規模の群落に急繁殖を続けている。

 多年生の浮遊植物のホテイアオイ(ミズアオイ科、南アメリカ原産)。一定の管理下では、水中の窒素やリンを吸収して水質浄化に―ともされる半面、逸脱時に及ぼす環境や人間の活動による影響が脅威となっている。世界の熱帯・亜熱帯域に帰化し、日本では本州中部以南の各地で野生化。豊栄養化した水域などでは急速に大繁殖して水面を緑一色に覆い尽くしてしまう。

 国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会の「世界の侵略的外来種ワースト100」の一つ。日本では、特定外来種生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)に基づく特定外来生物ではないが、「要注意外来生物」に指定されている。

 徳之島ダムを管理受託している受益農家組織・徳之島用水土地改良区事務局(天城町)や天城町当局(農地整備課)によると昨年、ダム湖面の見回り業務中に外来種水草の侵入を確認し「ホテイアオイ」と断定した。エリアは、ダム湖の北西部の狭あいな入江部分の数か所。見回り業務と併せてボート上から手作業で回収・駆除を試みてきたが、その後急激に拡大し、もはや「手作業では追いつかない規模の群落に」なったという。

 鹿児島県内最大の「鶴田ダム」(薩摩郡さつま町、洪水調節・発電用、有効貯水量7750万㌧)では、ホテイアオイを中心にボタンウキクサ(特定外来生物)との2種が異常繁殖。その範囲は、ダムの上流約10㌔付近まで広がり、湖面の5~6割を緑で被覆。それらが寒さで枯死して沈み、植物体が腐敗すると水質悪化につながることから、昨年から重機を使った大がかりな除去作業を始めている。

 土地改良区事務局と町当局によると現在、関係機関と抜本的対策を協議中だ。当面の対策としては、見回り用ボート装着型の水草回収・除去装置の製作を依頼。「繁殖の進行度と回収効果を比較検討し、定期的な除去作業で抑えたい」としている。