相続未登記農地の貸出制度

相続未登記農地の利用促進のための制度活用が進められている喜界町(資料写真)

 
利用促進で「有効な手法」
全国初 喜界町で
県評価、制度の周知図る

 

 2018年11月施行の改正農業経営基盤強化促進法に伴い新設された、所有者不明の農地を利用しやすくする国の制度。相続未登記農地の利用促進のための制度として全国で初めて喜界町で取り組まれ、約19㌶の農地の集積に向けて順次手続きが進められている。この喜界町と町農業委員会の取り組みについて県は「有効な手法」と評価、県内市町村に紹介し、制度の周知を図っている。

 相続未登記農地は、所有者の死亡後、登記名義人が妻や子などの相続人に変更されていない農地。名義人と連絡が取れない場合も未登記の恐れが強いとされている。相続未登記農地を農地中間管理機構(農地バンク)に貸し出す場合、農業委員会が相続権を持つ全員を探し出し、その過半数の同意が必要だった。改正により探す範囲が登記名義人の配偶者と子までに狭まり、貸出期間は5年から20年に延びた。

 改正法施行後、喜界町は相続人の意向を確認し、18年12月に新制度での手続きに着手。農業委員会の調査、異議申立期間などを経て町は19年11月からバンクを通じて耕作者に貸し出せるよう準備を進めた。

 この喜界町の取り組みは農業振興に役立つとして、9月定例県議会の代表質問で公明党の森昭男議員=鹿児島市・鹿児島郡区=が取り上げた。答弁で満薗秀彦農政部長は「喜界町の取り組みは相続未登記農地の利用促進を図る上で有効な手法。県では担当者会や広報誌等を活用し、喜界町の事例を市町村等に紹介するなど制度の周知を行っている」と報告。県の周知により、現在、喜界町のほか、東串良町や奄美市、いちき串木野市で同様の取り組みが進みつつあり「今後ともこの制度を活用して担い手への農地集積を推進していく」との方針を県は示している。

 なお、町農委は担い手への農地の利用集積・集約化の現状(今年3月末現在)をまとめている。管内の農地面積は2250㌶で、これまでの集積面積は1414㌶(集積率63%)。相続未登記農地が多く、担い手への利用集積が十分に進んでいないことから、相続未登記農地の権利調査を推進。20年度の集積面積の目標は1600㌶(うち新規集積面積20㌶)を掲げている。