クロウサギ・タンカン農家共に育って

クロウサギとタンカン農家の「共生プロジェクト」で作成したストーリーブックのミニ絵本「なかよしのしるし」(徳之島自然保護協議会作成)

ミニ絵本「なかよしのしるし」製作
共生PJでブランド化、グリーンツーリズムも計画

 【徳之島】徳之島地区自然保護協議会(美延治郷会長)は、国の特別天然記念物アマミノクロウサギとタンカン農家とが共に育つ「とくのしま共生プロジェクト」の一環でこのほど、これまでの共生取り組みのストーリーを紹介したミニ絵本『なかよしのしるし』を製作した。引き続き、タンカン苗木食害対策と共生取り組みのブランド化、グリーンツーリズムなども進める方針だ。

 徳之島3町でつくる同島自然保護協事務局(徳之島町企画課)によると、「とくのしま共生プロジェクト」は、環境省の地域循環共生圏確立に関する事業とふるさと納税財源を活用して2019年度に着手。長年の保護活動が奏功してクロウサギの生息数が増えた傍らで増え始めた農作物の被害。とりわけ、永年作物のタンカン幼木はクロウサギに幹をかじられて枯死する深刻な被害も顕著化。同初年度事業では、行政と専門家が連携した保護柵(さく)の設置や、これら取り組みを広く紹介するストーリーブック絵本作成のハード・ソフト両面で取り組んだという。

 『なかよしのしるし』の企画・編集は㈱モスク・クリエイション徳之島ベースが担当。B5判変形(182㍉×128㍉)の全18㌻ミニ絵本。初版は1500冊を製作した。

 甘くておいしいタンカンの木がある夜、「カジカジ」とかじられて、やがて枯れる。農家がクロウサギを懲らしめよう思った矢先、ケンムン(奄美地方に伝わる妖怪)が現れて対策を講じ、双方をさとす。タンカンの入った箱にはクロウサギと農家がもっと仲良しになった「しるし」(オリジナルパッケージ=ブランドマーク)をつけ、仲良く共生していく―というストーリー。

 巻末では、子どもも大人にも考えて欲しいと「クロウサギの保護活動」「保護と共生の課題」「誰もが幸せに暮らせる島へ」の3項目の解説文もつけた。

 同自然保護協は引き続き今年度の活動として、被害の多い徳之島町母間や花徳地区の児童や住民とも連携したグリーンツーリズム、食害防護柵の設置体験を兼ねたエコツアーの開催。そしてクロウサギと共に育つタンカンのオリジナルパッケージの作成などにも取り組む方針だ。

 ちなみに、新潟県佐渡市では、国指定特別天然記念物で絶滅危惧種の朱鷺(とき)の保護活動の傍らで、大切な水稲が荒らされる被害に農家は泣かされた。その逆境を逆手に取った独自農法による同市認証米『朱鷺と暮らす郷・朱鷺米』ブランドを確立した例もある。