第42回繊研賞に金井工芸

表彰される金井さん


「繊研賞」の盾を抱え、表彰式とは変わって満面の金井さん

奄美初の栄誉に耀く
紬の伝統技法を現代デザインと融合

 【東京】「第42回繊研賞」(主催・㈱繊研新聞社)の贈呈式が27日、千代田区紀尾井町のホテルニューオータニで行われ、(有)金井工芸(龍郷町)の金井志人(ゆきひと)さんが出席した。奄美からは初の受賞となる栄誉に、金井さんは喜びをかみしめていた。

 「繊研賞」は、繊研新聞(中央区日本橋箱崎町)が1978年に創業30年を記念した賞で、繊維、アパレル、ファッション、小売流通、ライフスタイル分野において、業界の発展、向上に寄与した団体、個人、企業活動等に対し、業界有識者からなる選考委員会の審査によって決定、毎年贈られているもの。第42回(2019年度)は、革新的なファッションを提案した「アンリアレイジ」など五つが選ばれた。そうしたなか、「大島紬の伝統技法を現代のデザインと融合し、技術の継承と将来の展望を示す」として金井工芸(金井一人社長)が受賞者として入ったもの。同社の若き後継者として、授賞式に臨んだ志人さんは、やや緊張した表情にも「泥染めの技法を基に、先人が築いた奄美大島の文化を継承していきたい」と堂々のあいさつ。出席者から大きな拍手を浴びていた。

 泥染めを担う工房に生まれた志人さんだが、18歳(17年前)の時に上京。音響関係の裏方の仕事に就くなどしたという。やがて奄美へ戻る。25歳の頃だった。「いったん故郷を離れたことで、奄美を俯瞰(ふかん)して感じられ、その良さが分かった」ことが、泥染めに没頭できる源になったようだ。「うちが受賞していいのかな」の戸惑いもあったというが、奄美初の栄誉に「もう次の展開も考えていますので、楽しみにしてくださいね」と責任感に目を輝かせていた。また、金井工芸は、「日本が誇る絹織物の最高峰の一つをいかに守り育てていくか、という課題に取り組んできた」との評価も受けている。

 繊研新聞の10月9日付「第42回繊研賞」の特集面に、金井一人社長は受賞への感謝のほか、大島紬や染めの現状、展望を述べたうえで次のような言葉で締めくくっている。「追い求めることが変わりゆく時代の中で、染めをさせてもらっている意識を持ちながら、これからもクリエイティブな伝統芸を創っていきます」。