農家とクロウサギ共生へ

クロウサギ観察と、タンカン幼木の食害防護柵設置にも協力した参加者たち(円内は資料写真)=23日、徳之島町

島民対象のモニターツアー
徳之島自然保護協 生態観察とタンカン防護柵設置

 【徳之島】徳之島自然保護協議会(美延治郷会長、事務局・徳之島町企画課)が主催する島民対象のモニターツアーが22、23日、「アマミノクロウサギと『なかよし』なろうツアー」と銘打ちあった。小学生含む家族連れなど15人が参加。ナイトツアーによるクロウサギの生態観察、同生息数回復の反動的に増えているタンカン幼木の食害の現状も学習。同防護柵の巻き付け作業も体験して、共生のあり方を考えた。

 同事務局によると、クロウサギなど希少動植物を保護しながら世界自然遺産登録を目指す中で近年、クロウサギによるタンカン樹など農作物の被害が問題視され「島民と希少種が共に暮らせる島づくりが喫緊の課題」。初のモニターツアー(参加費大人3千円、子ども千円)は、生態学習や、農家との共生に向けたエコ・グリーンツアー分野への商品化への模索、そのためのブラッシュアップも目的という。

 1日目22日午後6時からまず、クロウサギの里・天城町当部集落の茶処「あがりまた」を発着点に、町の「クロウサギ観察小屋」のある南部ダムまで約1・2㌔を徒歩で観察。往路だけで計8匹ものクロウサギが目撃され一行を大いに感動させた。観察小屋では、環境省・奄美群島国立公園徳之島管理官事務所の福井俊介管理官らの講話やビデオ視聴でも学んだ。

 2日目午前中は、実際にタンカン幼木の食害に悩んでいる徳之島町花時名の松下清志郎さん(58)=母間=のタンカン園を訪問。4、5年もの幼木を中心に幹をかじられ、最悪枯死している現状など生の声を聞いた。そして、町がふるさと納税の財源で購入した既製品(猫よけシート)を応用して幹に巻き付ける作業にも協力した。

 天城町から長女(小学3年生)と2人で参加していた基るみ子さん(48)は、「クロウサギは車内からしか見たことがなかった。(路上を)ぴょんぴょん跳んで逃げる姿などたくさん観察でき、子どもも大喜び」。農作物被害には「実際にこんな被害があるとは初めて知った。こうした対策でヒトとクロウサギが共生できたらと思う」。

 園主の松下さんは「イノシシも来るため一時は電気柵を設置。だが『クロウサギにはかわいそう』との声が」と苦笑。個人的に効果を確認済みという「猫よけシート」応用の防護柵(ネット)の設置作業は「1人だと手間がかかるが、大勢でやると楽しい」と話した。

 自然保護協事務局は今後、同防除効果の検証やツアー参加者らの意見も整理。徳之島エコツアーガイド連絡協(美延睦会長)とのツアーパッケージ化の検討、特別天然記念物のクロウサギとの共生で育ったタンカンのブランド化も進める方針だ。