県内21市町村、合計150匹

今年の誘殺数は合計150匹と大幅に増加したミカンコミバエ

ミカンコミバエ 今年の誘殺数 前年比4倍強と大幅増加
寄主植物「適切管理を」

 果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエは今年、異例の状況となった。調査用トラップによる雄成虫の誘殺はこれまで奄美など島嶼地域が中心だったが、県内21市町村と広範囲に及び、誘殺数は合計150匹(12月25日現在)となり、前年(35匹)の4倍強と大幅に増えた。雌の生息を示す幼虫は初めて県本土でも確認された。気温が低下する12月下旬に入っても奄美大島で確認、発生や繁殖を抑制する取り組みが求められている。

 今季の誘殺確認は6月9日の屋久島町が最初。これまでの誘殺数を地区別にみると、最多は大隅半島(県本土)の最南端・南大隅町で27匹に達した。次いで屋久島町(23匹)、十島村・中之島(14匹)、指宿市(13匹)と続き、奄美の市町村の最多は龍郷町の12匹で唯一の二桁となっている。

 気温が低下する冬場になると県本土での誘殺数は減少。12月に入ってからは宇検村で3匹(21日1匹、25日2匹)確認された。冬場の誘殺について農林水産省門司植物防疫所の中川智秀統括植物検疫官は「12月でも気温が20度を超える日があり、ミバエの活動が止まることはない」とした上で、宇検村での誘殺については「風の影響。ミバエが発生している中国の南部地域から流れ込む風を観測しており、海外の発生地からの飛来の可能性がある」と指摘する。

 年間の誘殺確認数は例年20~30匹程度だが、今年の急増、特に県本土でも多数確認されたことについては「九州では鹿児島県だけでなく熊本や宮崎、福岡各県など九州の広い範囲で確認されている。例年に比べて南から北上する梅雨前線が長く居座り、さらに台風の影響により海外の発生地(台湾や中国南部など)から九州を目指して流れ込む風が多かったのが、大量に多地点での誘殺確認につながったのではないか」と分析する。

 鹿児島県では幼虫も確認された。9月25日の南大隅町を皮切りに、指宿市、徳之島町、十島村の4町村で。県内での発生は奄美大島で移動規制(かんきつ類などの持ち出し制限)措置がとられた2015年以来。11月中旬、グアバなどから幼虫が見つかった中之島では農水省がかんきつ類の島外移動自粛を要請。これにより同島では出荷間近だったスイートスプリングやポンカンなど島内全域のかんきつ類の廃棄処分が行われた。

 繁殖により幼虫発生が増加すると、こうした事態が繰り返される可能性がある。門司植防・中川統括植物検疫官は「グアバなどの寄主植物は果実を残さず早く収穫し、落下したものはそのまま放置せず処理するなど適切に管理していただきたい。農家のみなさんは防除暦に沿って基準に基づき薬剤の散布をお願いしたい。普段から意識を持ってミバエ対策を進めてほしい」と呼びかけるとともに、「幼虫らしきものを見つけたらすぐに市町村、県、植防に連絡を」とアピールしている。