徳之島外ネコ トキソプラズマ感染率47・2%

捕獲・一時保護されたノネコやノラネコ(天城町、記事とは無関係)

国内最高レベル 東京大など論文発表
背景に「ネコ密度高さ」

 【徳之島】東京大学などが徳之島で実施した「外ネコ(ノラネコやノネコ)のトキソプラズマ抗体陽性率調査」の結果、同抗体の保有率は国内(平均4%)のどの地域よりも高い「47・2%」だったことが判明。同数値の背景に、専門家は「餌付けによるネコ密度の高さ」を挙げ、「(在来種の)捕食だけでなく人獣共通感染症のリスクも明らかになった」と指摘している。

 調査・発表したのは東京大の農業生命研究科分子免疫学研究室や生物多様性科学研究室、同大学院農命科学研究科、岐阜大の応用生物学部獣医寄生虫病学講座、林業・森林生産研究所など研究グループ。学術情報サービスウェブ版(早期掲載版の先月30日付)に論文の一部を掲載している。

 同要点によると、徳之島における放し飼いの外ネコ(ノラネコ・ノネコ)125個体のトキソプラズマ感染の有病率、抗体保有率(血清陽性率)はじつに47・2%に上った。体重別では成獣(2㌔以上)の個体は57・4%と半数以上、幼獣(2㌔以下)は12・5%だった。

 抗体保有率は島の全域で確認され、3町間や環境(森林や町)による差はなかった。「ELISA」と「Western blotting」と呼ばれる独立した手法での両分析結果も同数値を示し、信頼性は高い。感染の経路は、感染した個体の便による土壌や水の汚染が指摘されている。

 今回得られた同数値を重視した森林総合研究所・野生動物研究領域の亘悠哉主任研究員は「国内のどの報告よりも高い値であり、徳之島の野外において広くトキソプラズマ原虫の感染サイクルが成立していると考えられる」。隣の奄美大島の値(約9%)をも大きく上回り「詳しい理由は分からないが、島の広範囲で行われている餌付けでネコ密度が高いからかもしれない」と指摘。

 奄美大島ではアマミトゲネズミやアマミノクロウサギへの感染例が報告されており、徳之島における在来種への影響も懸念する。

 その上で「外ネコが(在来種の)捕食だけでなく、人獣共通感染症のリスクになっていることは明らか」。ネコの個体数を支えている餌付けや放し飼い行為が、高い抗体保有率につながっていると考えられ、あらためて「捕獲と適正飼養が重要」と呼び掛けている。

 【トキソプラズマ】 コクシジウム綱に属する寄生性原生生物の1種。ヒトを含む幅広い恒温動物に寄生してトキソプラズマ症を引き起こす。通常は免疫系で抑え込まれるが、免疫不全の状態だと重篤あるいは致死的状態にも。妊娠初期の初感染時は、胎児が重篤な障害を負うことも指摘されている。