奄美は野鳥の宝庫 ◎現場から

夢中で鳥を探す子どもたち

日本全国の約6割の鳥が見られる
「多様な環境がある証」

「この鳥知ってる?」「ルリカケス!」子どもたちの元気な声がプレイルームに響いた。

奄美市笠利町の緑が丘小学校(菊池悟校長、児童23人)は2月13日、児童・教職員32人を対象に「野鳥に関する学習会」を開いた。講師はNPO法人奄美野鳥の会会長の鳥飼久裕さん(60)ら会員5人。奄美に生息する野鳥について名前や特徴・鳴き声等を教わった後、外に出て野鳥観察へ。

「あ、サシバだ!」「カッコイイ!」双眼鏡や望遠鏡をのぞきながら約1時間学校周辺で鳥を探し、ルリカケスやサシバなど10種類の鳥に会うことができた。

鳥飼さんは、奄美で観察された野鳥は約360種類(留鳥約40種類、夏鳥約10種類、冬鳥約70種類、旅鳥・迷鳥約240種類)で、日本全体で観察された野鳥は約600種類と説明。日本の国土のわずか0・3%の面積しかない奄美群島で、日本で観察された野鳥の約6割を見られる。しかもオオトラツグミやオーストンオオアカゲラなど固有種が多く、これらの鳥を目当てに観光客がやってくることも。まさに「野鳥の宝庫」だという。

参加していた奥惟人さん(12)は「鳥が好き。種類がいっぱいあって一つ一つ色や鳴き声が違って面白い。うちは山が近いのでよく鳥の声が聞こえ、探しに行く。自分だけだと知識がないが、人に教えてもらえるともっと興味が湧く。普段何気なく見ているルリカケスを遠くから見に来る人がいると知って驚いた。そんなに貴重な鳥を近くで見られるなんて、奄美でよかったと思う」と笑顔で話した。

同小は2017年から19年まで3年間、県の愛鳥モデル校に指定されていた。今も、図鑑や双眼鏡などを置いた鳥コーナーを校長室前に設置し、登校時に見つけた鳥を教えるなど、子どもが鳥に親しむ機会を日常的に継続させている。菊池校長は「今では子どもたちが鳥について教えてくれるようになった。これも郷土教育の一環。ずっと奄美にいると当たり前のように思うが、世界自然遺産の候補地にもなっているように、実はものすごく貴重な自然に恵まれている。この島のよさを子どもたちが語れるようになってほしい。『この島には鳥がいる!』と。自分たちの住んでいるところはすごいところなのだと。ふるさとを愛する気持ちが彼らの支えになる。これからも奄美のいいところを教えていきたい」と語る。

野鳥が好きな人はどんなところに魅力を感じているのだろう。話を聞いてみた。

同会会員の高美喜男さん(69)は「もともとは鳥に興味がなかった。いつもそこらへんにいるものと思っていたら、違った。実はダイナミック。目の前にいる鳥が実はシベリアから来たり、南に渡る途中だったり。大冒険をしながら今、奄美にいる。そう考えてみたらがぜん面白くなった」と語った。岩元さよ子さん(61)は「鳥の鳴き声が面白い。それに鳥を通じて季節を感じることができる」。後藤義仁さん(45)は「父がバードウォッチングをしていて興味を持った。双眼鏡一つあればいつでもどこでも楽しめる。手軽にできるし、写真も撮れる。年間通して楽しめる」と話した。

サシバ愛護会関西の与名正三さん(69)は「タカやハヤブサは獲物を捕る。食う・食われる、の生きる世界を目の前で見ようと思えば見られる。『見る』という意識が大切。鳥を突破口にして、生きものや自然に興味を持って欲しい」。人によって感じる魅力は違っているようだ。

同会の鳥飼会長は「鳥は自然の豊かさ、多様性を感じさせてくれる。いろんな鳥が来るということだけで、奄美自体が多様な環境であることの証だと思う。それに見ていてかわいいし、きれいだし。奄美の森の回復力はすごい。他には見られないほど。誇ってよい」と語った。

意識しないと当たり前で気づかないが、実は貴重なところに住んでいるとわかると、なんだかうれしくなる。筆者自身も奄美に来るまで鳥に興味がなかった一人。たまには散歩しながら耳を傾け、ゆっくり鳥を探してみることをお勧めしたい。いろんな鳥がすぐそこにいる、それが奄美の魅力のひとつだと感じている。(藤浦芳江)