クロウサギと共生のタンカン

高校生らに「クロウサギが訪れる農園で育ったタンカン」を贈呈しPR=1日、徳之島高校

徳之島自然保護協 徳之島高に贈呈PR

 【徳之島】徳之島自然保護協議会と徳之島町当局の「アマミノクロウサギが訪れる農園で育ったタンカン」の贈呈式が1日、県立徳之島高校(立石賢二校長)の全生徒259人および全職員ら計310人を対象にあった。農家とクロウサギの共生取り組みのあかしを1㌔ずつ計310㌔と、絵本「なかよしのしるし」を1冊ずつ贈呈。巣立ちを前に、世界自然遺産登録の推進や島の物産PRなど協力も求めた。

 同自然保護協議会は徳之島3町の自然保護関係者で構成。同協議会と行政は、生物多様性の象徴的存在である国指定特別天然記念物アマミノクロウサギによって、特産果樹タンカンの幼木の幹がかじられて枯死するなど被害が続いていることを憂慮。連携して共生取り組みを模索してきた。

 同自然保護協ではまず2019年度から徳之島町企画課(当時・同自然保護協事務局)と連携し、環境省の「環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」を活用。ふるさと納税支援も併用して「クロウサギが共に暮らせる島づくり」への食害防止柵(さく)の設置やエコツアーの開催、啓発用の絵本「なかよしのしるし」を製作。被害対象農家(7戸)は今春から、ふるさと納税返礼品などに同共生ブランドの段ボール箱で出荷を開始。徳之島高についてはエコツアーのポスター制作にも協力し、今回その感謝も込めて贈ることに。

 贈呈式は卒業式(2日)への予行練習など合間に同体育館であった。徳之島自然保護協の政武文副会長は、クロウサギによる食害や共生取り組みの大切さなどを解説し、「世界自然遺産推薦の島に住んでいることに自信を持ち、卒業して島外に出てもこの島の自然や文化を大いにアピールして欲しい」。

 町企画課の村上和代課長も「クロウサギと農家が共に暮らせる島として一歩前進したと思う。今後は、共生して生産されたタンカンとして島外に販売。ブランディングを意識して活用することで農家の所得向上、地域の活性化も図れると思う。(巣立つ)3年生はこの島の観光大使になって欲しい」ともエールを送った。

 生徒を代表して前生徒会長の大勝彩香さん(18)=3年生=にタンカンを手渡した。看護師を目指して鹿児島市内の看護学校に進学する大勝さんは「被害の話は聞いていた。観光大使にもなれるよう頑張り、タンカンなど島の物産も宣伝して徳之島を広めたい」と話した。