「稲作文化」伝承も期待

稲作文化の継承も期待して、「こうしりいじゅん公園」ミニ水田であった田植え体験交流=17日、天城町瀬滝

にぎやかに田植え交流
天城町瀬滝「いじゅん公園」

【徳之島】天城町瀬滝地区の通称「こうしりいじゅん公園」のミニ水田で17日、恒例の田植え体験交流があった。兼久小学校(児童数50人)の校区子ども会や保護者、地域住民など約150人が参加。泥に足の自由を奪われて座り込んでしまう子らの爆笑ハプニングも交え、稲作文化の継承にも期待して稲作体験をスタートした。

「こうしりいじゅん」は「川尻の湧水」の意。1955年代ごろまで瀬滝地区の水くみや洗濯の場、井戸端会議など交流の場だった地。農地造成や自然災害などで埋没の危機にひんしたが県事業に絡めて96年に公園化。同地区唯一の稲作体験用の水田(約150アール)も設置して取り組んでいる。

昨春は新型コロナウイルス緊急事態宣言(7都道府県)で、集落の高齢者組織など大人だけで実施。瀬滝民謡保存会による伝統芸能「田植え歌」の披露は今年も見送られた。

子どもたちは低・中・高学年の3グループに分かれて交互に田んぼに入り、大人たちの手ほどきで田植えに挑戦。絶叫ハプニングを交えつつも大切に苗を植えた。児童の一人・岩元聡亜(そうあ)くん(4年生)は「苗を泥にさしたり、埋めたりと楽しかった。みんなで収穫しておもちをつくのも楽しみです」とにっこり。

苗床づくりから担っている瀬滝集落の院田吉雄区長(70)は、「(伝統芸能の)七月踊りや田植え歌も稲作文化に根ざしたもの。水田減反政策でサトウキビ転作が進み約50年、現在の保護者たちも田植え作業の経験は少ない。体験と併せて稲作文化の〝原風景〟を残すことは大事」と強調する。

今春赴任した兼久小の仮屋浩一校長も「徳之島では減反政策で田んぼが無くなった歴史があり、子どもたちにはその歴史も踏まえ、非常に貴重な体験をさせていただいている」と感謝していた。

今年も8月上旬ごろに子どもたちを交えて刈り取り、昔の脱穀機などを使って収穫。収穫米でついた餅は9月の集落敬老会でお年寄りたちにプレゼントするほか、稲わらは正月のしめ縄飾りにも活用する。