ドキュメンタリー映画「夫とちょっと離れて島暮らし」編集中

映画「夫とちょっと離れて島暮らし」を制作中の國武さん

監督・國武綾さん、ちゃずさん追っかけカメラ回し
西阿室集落の人々に感謝

俳優業をしている広島出身の國武綾さん(34)は、この2月にプロデューサーの夫・中川究矢さん(42)と奄美大島に移住してきた。夫婦にとって奄美は2018年から訪れている大好きな場所。「引っ越したいね」とかねてから奄美移住を計画、調べてきたという。その中で、出会ったのが『夫とちょっと離れて島暮らし』(ワニブックス刊)の本の著者でイラストレーターのちゃずさんだった。島暮らしをする、ちゃずさんが東京に戻る話を聞いた國武さんは、「映像作品を作りたい」と夫に相談、「ドキュメンタリーならできる」と、とんとん拍子に映画作りを決めた。カメラを初めて回した作品は現在、一般公開前の編集作業という大詰めを迎えている。ストーカーのようにちゃずさんを追いかけて、ドキュメンタリー映画制作をする國武さんに話を聞いた。

國武さんは、奄美を調べるうちに奄美と東京と二つの拠点生活をするちゃずさんを知った。2019年のこと。東京エフエムに出演していたちゃずさん、インスタグラムでの島暮らしぶりを漫画で紹介。新宿に夫をおいて、なんでうまくいってるの?どう、気持ちが変化したの?ちゃずさんの生き生きしている声を聴いて、「興味を持った。なんでなの?その秘密を知りたかった」。

いてもたってもいられない思いで、ちゃずさんに「私が映画を撮りたい」とダイレクトメールを送り、会いに行ったのは20年2月。場所は加計呂麻島西阿室。初の映画撮り。カメラ回しも全く知らない、操作方法もわからない國武さんにアドバイスを続けたのは夫だった。1週間の初撮影。翌3月に10日間の撮影を行った。

ちゃずさんは4月に東京に戻る予定が、コロナ禍で戻るに戻れず。國武さん夫婦も加計呂麻島に再入島できず、映画撮影続行は断念するしかなかった。ところが、西阿室集落の人たちが、國武さん達の代わりに、ちゃずさんが帰る9月末までの動画撮影をずっと行ってくれたのだった。

國武さんに、動画データが届いた。そのデータ量に驚いた。「コロナ禍で思うようにならなかったけど、『お食事処もっか』さん中心に、西阿室の集落の人たちに本当に感謝しました」と喜びを言葉と体で表した。映画の続きがこれでできると、膨大な量のデータをすべて見ながら編集作業に臨んだ。

昨年末には、夫婦で奄美移住を決め、今年2月の頭には「コロナで引きこもっていた東京生活にサヨナラしよう、いつまで待っていても奄美にはいけない」と奄美市名瀬に居を構えた。

脚本がないため、素材を見て編集を続けているが、映画の編集作業はWi-Fiの環境があればできるので、「島でも大丈夫」と、疲れた体を休める時には大浜海岸の夕日を見に行ったり、あやまる岬や打田原海岸まで車を走らせる。「東京では絶対にありつけない、サイコーの環境」。

映画については、「チャズさんが島で何を教わったか、島に何をもたらしたか、加計呂麻島の景色や人に癒される作品で、ほっこりするような作品にしたい。ちゃずさんが描く作品が出来上がっていくところは見どころ」と語る。そして、映画作りは、「國武監督+西阿室集落の人々のような気持ちが大きく、ありがたかった」と話す。

ストーカーのようにちゃずさんを追いかけ、自らも移住してきた國武さん。「一番心をほぐしてもらっている」と島があっての出会いに感謝する。大浜海岸の「トゥギャマリカフェ」(とんがったお尻)でアルバイトもしながら映画編集を続ける國武さんは「海を見ながら働けるなんてうれしい」と、夫と2人で島暮らしにご満悦。

映画は6月ごろに、加計呂麻島西阿室での試写会を皮切りに於斉、実久、諸鈍の交流館など島内での上映祭などを行う予定で、奄美大島では名瀬の十番館などにお願いして一般公開、全国には年内の公開を目指している。
    (永二優子)