クロウサギ事故死過去最多 地元と協力し対策

IUCN勧告受け環境省
「世界の宝に住んでいる自負持って」

 IUCNは「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」を「登録」と勧告したが、一方でアマミノクロウサギなどの希少種の交通事故死を減少させる取り組みを行うよう要請した。環境省の発表によると、国の特別天然記念物アマミノクロウサギの2020年の交通事故件数は過去最多の66件(奄美大島、徳之島の合計)。同省は県や市町村などと協力しながら交通事故防止に取り組む姿勢を示した。

 奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長によると、アマミノクロウサギの交通事故件数は、2015年19件、16年25件、17年34件、18年40件、19年38件と推移していたが、20年に大きく増加したという。

 事故が急増した理由について阿部所長は「野生生物を襲うマングースが駆除され、アマミノクロウサギの分布域が拡大したことが大きな要因ではないか。特に冬は繁殖期となり動きが活発になるため、交通事故に遭いやすくなる」と解説している。 

 またアマミノクロウサギは夜行性で、ハブなどに襲われないよう見通しの良い道路上でフンをしたりエサを食べたりする習性があり、そのため夜間の交通事故が増える傾向にあるという。

 同事務所は勧告前から、アマミノクロウサギの輪禍死が発生した箇所への看板設置や、交通事故防止キャンペーンを冬季に実施しチラシを配布するなど、交通事故防止に向けて啓発活動を展開してきたという。

 勧告を受けて、阿部所長は「啓発活動だけでは限界がある」と話し、「アマミノクロウサギが道に出てこないよう柵やフェンスを設置するなど道路の構造を変えたり、速度規制をかけたりといった取り組みが必要」とし、「県や市町村と相談しながら進めていきたい」と積極的な姿勢を示した。

 また地域住民に対して「世界の宝、人類の宝に住んでいるという自負を持って、島の自然環境や野生生物に配慮した暮らしを考え、意識していく必要がある」と述べ、改めて島民に意識改革を呼び掛けた。

 奄美野生生物保護センター、徳之島管理官事務所では、アマミノクロウサギなど希少種の死体情報を集めている。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら連絡するよう、協力を呼び掛けている。傷病鳥獣や事故の情報は、奄美野生生物保護センター電話:0997・55・8620、徳之島管理官事務所電話:0997・85・2919まで。