西郷像見守るテッポウユリ手入れ

西郷隆盛像の後ろにある花壇で手入をする内さん(中央)と永吉さん(右)ら

東京の沖永良部島出身者 和泊町から提供の球根植栽

 【東京】台東区の上野公園を象徴する、西郷隆盛像を見守るように純白のテッポウユリが花開いた。このほど沖永良部島出身者らが、その手入れに集った。間もなく見頃は終わるが、12月に同地で行われる「西郷隆盛生誕祭」に向け意欲を燃やしていた。

 精力的に取り組んでいるのは、「西郷隆盛に学ぶ『敬天愛人フォーラム21』」(代表世話役・内弘志さん)の関係者たち。毎月第2日曜日に銅像周辺を清掃している同フォーラムは、昨年11月の活動中に花壇の土が一部むき出しになっていることに気付いた。「西郷さんの裏とはいえ、はげ山では寂しい」(内さん)とテッポウユリ(えらぶゆり)を植えることを決意。早速、フォーラム会員の永吉きぬえさんが、同級生の伊地知実利和泊町長に相談すると、球根約300が無料で提供された。ところが、土がとても硬く埋めるのに一苦労。また、新たな球根を植える際には、既に植えたものを踏みつぶすなど、アクシデントが重なった。さらに水分が欲しい時に雨が降らず、やっと咲き始めたと思ったとたんに、持ち去られたりもした。悪戦苦闘の末に花が開いたのは、5月の下旬だった。   

 永吉さんは「70球ぐらいでしょうか。厳しい条件で、これだけ咲いたのは上出来ですね」と可憐な花姿を見詰め、笑顔で語っていた。

 テッポウユリは、1898(明治31)年、沖永良部島の沖合で難破した英国船の英国人を助けたことをきっかけに栽培された。奇しくも、上野に銅像が建立された年だった。それ以降、島の経済を潤してきた。現在では「かごしまブランド」として広く知られている。試行錯誤の中での開花。内さんは「苦戦しましたが、次につながる体験です。12月の西郷隆盛生誕祭では、工夫して多くの花を咲かせたいですね」。西郷像を見上げながら、故郷の花を眺めていた。