第1回奄美群島世界自然遺産候補地保全・活用検討会

小野寺座長(左端)と意見交換する地元首長ら

「地元の主体性発揮を」

 

自然保護 地域振興 両立へ調和した策求める

 

 【鹿児島】第1回奄美群島世界自然遺産候補地保全・活用検討会が13日、鹿児島市の県庁であった。学識経験者や候補地に挙がっている奄美大島、徳之島の地元首長、県の自然保護課など関係者が集まり、保全計画や地域振興の在り方などについて話し合った。

 座長を務めた小野寺浩・鹿児島大客員教授は「日本の絶滅危惧種に指定された植物の8分の1が、国土の面積の300分の1しかない奄美群島に生息している」という自然の特殊性の例を紹介し「ほとんどの森林が明治以降、人の手によって伐採されたにも関わらず、その生態系を維持しており、人間の生活と共存しながら自然が残されている世界的にも稀有な地域」と指摘した。

 奄美群島振興開発審議会の元会長・宮廻甫允委員(鹿大名誉教授)は、これまでの奄振が本土との経済格差を埋めるためのインフラ整備が中心だったのが、近年は「地域の自立的発展を目指し、ハードからソフトへの移行も進んでいる。自然保護と地域振興は対立する関係にもあるが、世界遺産登録を契機に両者を調整、調和した振興策を考えるべき」と主張した。

 奄美市の朝山毅市長は「かつての奄美群島は何の資源もないところと考えられていたが、先祖代々守ってきた自然が世界的にも貴重な資源であり保全していく責務がある」と同時に「その資源をどう活用し、経済振興に結び付けていくか、難しい課題に取り組まなければならない」と述べた。小野寺座長は「国が設置する世界遺産センターに併設して物産館を設置して観光客の満足度を上げる」など環境保護と地域振興のための取り組みのアイディアを提案し「県は地元と国との仲介役を、地元はもっと主体性を発揮して世界遺産を契機とした新たな地域振興に取り組んで欲しい」と提言していた。
(政純一郎)