外国人受け皿の整備進む

特例案内士育成研修に合格した47人は、今後市町村への登録を経て地域を限定した有料ガイドが可能になる(資料写真)

特例案内士育成研修 群島全体で47人合格

 奄美群島広域事務組合が昨年10月に開講した、奄美群島特例通訳案内士(以下、特例案内士)育成研修が昨年末修了し、今月あった最終試験を経て、群島全体で47人が合格した。世界自然遺産登録や関西とのLCC就航など、外国人観光客の増加が見込まれるなか、奄美大島では外国人観光客とガイドをつなぐ窓口を担う会社も設立されるなど、外国人観光客の受け皿となる体制は着々と整備されつつある。

 通訳案内士は通訳案内士法に基づく国家資格で、語学力や歴史、地理などの知識が必要とされる。同法では資格者以外が報酬を得て外国人を案内してはならないと定めているのに対し、一定の研修を修了して特例案内士に登録された人が、外国人観光客へ有償ガイドができるようになる「奄美群島特例通訳案内士制度」が改正奄振法で創設。外国人観光客の受け入れを担う通訳ガイド不足、多様な観光ニーズや需要増への対応といった課題を解消し、再訪意欲の向上などの事業効果が見込まれている。

 育成研修は事前申込者88人の中から、奄美大島など主要5島の各会場で事前審査に合格した56人が受講。語学や奄美群島の自然・地理、歴史、経済・産業などに関する地元学、実地研修など計54時間の講義に加え、救命講習を受講してガイドに必要な要素を学んだ。

 全合格者の約半数にあたる27人が合格した奄美大島では昨年10月、特例案内士制度開始に伴う営業インフラ整備を見据え、㈱奄美国際ネットワーク(杉岡秋美代表取締役)が設立された。誕生した特例案内士と外国人観光客をwebページでつなぎ、外国人個人観光客市場の確立を主な事業に据える。

 このほか、観光パンフレットや宿泊施設などの業務案内の翻訳、登録した第三種旅行業を活用した旅行サービスの提供、ホームページやSNS活用による海外への情報発信などを通じ、奄美観光における多様な外国語ニーズに応えることなどを目的に活動する方針だ。2月中にホームページ開設に向け作業中で、3、4月頃から特例案内士と外国人観光客とのマッチングを目指しているという。

 国家資格の通訳案内士の資格を持つ杉岡代表取締役は、「特例案内士に合格した人は、観光をやったことがない人ばかり。ガイドには経験や知識の蓄積が必要」と指摘。ガイド実践に備え、来月12日にはエコツアーガイドの代表者や国家資格で通訳ガイドを行うプロを招いて講演を開き、特例案内士の教育にも努めていく計画を示している。

 一方、県が発表した15年の観光動向によると、外国人観光客は前年比56・3%増の約41万人で、過去最高を記録した。このうち、台湾が12万6850人で最も多く、香港6万4300人、韓国6万410人など東アジア圏の旅行者が多数を占める。本土の観光地やお土産店などでは、英語に加え中国語を話せる人を設置し、対応にあたるケースもみられる。

 広域が実施した育成研修は、世界共通語の英語に限定して実施した。広域は次年度も特例案内士の育成事業を実施する予定だが、英語以外の語学の開講については未定としているが、杉岡代表取締役は設立間もない会社としてのニーズ把握はできていないと前置きした上で、「観光業界では中国語ニーズがはっきりしている。今後、養成講座の開講を要望していきたい」と話した。