「食で考える環境フェスタ」

食と自然資産をテーマに討議したパネルディスカッション

主に地元食材を使った島じゅうりに手を伸ばす受講者ら

食材育む自然保全を
住用の島じゅうり試食も
基調講演や事例報告など

「食で考える環境フェスタ~住用の郷土料理を食べてみよう~」(奄美自然保護協議会ヤジ分会主催)が27日、奄美市住用町の住用公民館であった。基調講演や事例報告、パネルディスカッションで、奄美の自然を脅かす外来生物の現状や保護の取り組みを学習。約50人の受講者はタナガやウナギなど同町で採れた食材を使用した島じゅうり(郷土料理)に舌鼓を打つとともに、食材を育む自然環境の保全に理解を深めた。

奄美リュウキュウアユ保全研究会の米沢俊彦さんは、リュウキュウアユの生態などについて講演。本土のアユとリュウキュウアユの違いや分布などを解説したほか、生食や焼き、保存食など、様々な調理法があるアユ料理を紹介。「黒潮の森マングローブパーク」で取り組んでいる養殖技術の早期確立を訴えた。

奄美海洋生物研究会の興克樹会長は、奄美大島の河川に生息する淡水カメや外来魚など水生移入生物の調査結果を報告。興会長は「奄美大島では移入淡水カメを早期に根絶できる可能性は高い。外来魚の完全駆除を目指すためにも、全域が希少水生生物の生息場所であることを理解し、外来生物を遺棄しないようにしてほしい」と強調した。

環境省奄美野生生物保護センターの岩本千鶴自然保護官は、外来生物の被害として、①在来種の捕食など生態系の被害②営農活動の阻害など農林水産業被害③咬傷など人命被害―を列挙。「外来種対策は一人一人の心がけから。自然に興味を持つことから始め、周囲に伝えることで住民の意識が変わってくる」と述べた。

パネルディスカッションでは、「住用の島じゅうりからみる自然遺産」をテーマに、5人のパネラーが討議した。NPO法人「すみようヤムラランド」の和田美智子代表は、「山や川など自然が多い住用の食材の豊富さが、人が集まる要素になってくる」と指摘。岩本自然保護官は「奄美の食や文化は自然とのつながりの中で育まれ、本土にはなく奄美独特のもの。しっかりと守っていってほしい」と話した。

ディスカッション後はウナギの味噌炊きやアユの塩焼き、タナガのふやふやなど島じゅうりを試食。住用総合支所の松原昇司支所長は、「私たちの食文化や自然の価値をPRしていきたい」と意欲を示した。